徒然なるまま

日々の記録

感情を大きく揺さぶられた二人芝居『死の笛』

TEAM NACS Solo Project 5D2、安田顕さんと林遣都さんの二人芝居『死の笛』を観てきたので感想です。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

まず会場に入って、そのコンパクトさにびっくり。

総席数526席ということだけど、機材で結構潰れているので実際はもっと少なかったと思う。

日本一チケットが取れない劇団の名俳優と、これまたファンが多いであろうイケメン俳優の舞台でこのキャパは少なすぎる。

今回SNSでも全滅という人を結構見かけたし、もう少し大きなところでやってもいいのでは…とも思ったけど、安田さんがこの規模でやりたいと思ったことにも意味があるんだろうな。

 

私が観劇した日は、カメラが少なくとも7台は入っていました。

こんなにお金かけて社内の資料映像ってことはないと思うので、媒体は何であれ映像化はされるんじゃないかな。

 

ところで、会場で死の笛Tシャツを着てる人を自分以外にひとりも見かけなかった(スタッフさん除く)。

CUEの現場でよく見かける、onちゃんグッズ身につけてる人もほぼいなかったな。

真面目な舞台なのでうちわとかペンラとかは論外だけど、え、公式Tシャツもはしゃぎすぎ!?私浮いてる!?と焦りました…

 

私の席は「SD列」という聞き慣れないものだったので勝手に後ろのほうと予測して席を探したけどなかなか見つからず。

一旦ロビーに戻って座席表を確認すると、なんとA列より前の補助席!

前から4番目!しかもどセンターでした。

向こう数年分の観劇運を使い果たした気がする。

 

この距離で安田さんにお目にかかること自体ほぼ初めてなんですけど(ジャンボリーのトロッコで一瞬近くに来たことはある)、この距離で安田さんのお芝居浴びるの?

私、飲み込まれるんじゃないかな…

もちろん楽しみなんだけど、楽しみ通り越して少し怖くなってくる。

ドキドキと不安で胃が痛くなった(実際に胃薬飲みました)(直前にラーメン食べたからかもしれない)。

 

前置きが長くなりましたが、ここから本編の感想。今一度、ネタバレにご注意ください。

 

終わって一言めの感想は、

すごいものを観た…

でした。

 

冒頭、安田さんのひとり芝居。

数分間ひとことも発さず、動きと表情のみ。クタクタになりながら料理か何かをしているよう。観客一同、固唾を飲んで見守る。

その後、ようやく台詞が発せられる。

私たちが通常使う言葉とは違っていて、正直最初は聞き取れなかった。

ずっとこの調子で内容入ってこなかったらどうしようと一抹の不安がよぎる。

ただ、大事な内容を何度か繰り返し言ってくれるので大体の意味は掴めた。

どうやら安田さんが演じる役(なんて呼べばいいかわからない)の娘が酷い殺され方をし、その復讐をすると言っているよう。

重い内容に胸をギュッと掴まれる。

 

この辺りで言葉の法則もだいたいわかり、意味が掴めるようになってくる。

たぶん、最初聞き取れないのも制作側の意図じゃないかな。一気に不安な世界観に引き摺り込まれた。

 

その後、林遣都さん登場。

林さんも安田さんと同じ話し方。

内容はわかるけど、どうしてそういう話し方をするのかがまだわからない。

生まれつきなのか、それとも何か理由があるのか…

 

今回の舞台の8割くらいは、そのちょっと違和感のある話し方で進んでいく。

観るほうも集中力が必要だけど、演じるほうはもっと大変だと思う。

単純に、普段の話し言葉と違うので台詞を覚えるのが難しそう。

あと、決して彼ら(登場人物たち)に感情がないわけではないから、単語を並べただけの単調な話し方に感情を乗せないといけないのがすごく難しそうだなと思った。

でも感情めっちゃ伝わってきた。なんなら流暢に話す後半のシーンより感情があふれ出す場面もあったくらい。これが演技力か…

 

2人の間に存在する壁の意味、2人がなぜここにいて、何をしているのか。

決して説明的ではない台詞で、少しずつ明らかになっていくのがすごく上手いなと思った。

 

謎の注射、吹くと死ぬと言われる笛、安田さんの娘と思しき声と、林さんの想い人の家の謎…

安田さんと同じ境遇の「誰か」が書いた手紙。

これらがすべて繋がって真相を知ったとき、私は正直「よかった」と思った。

安田さんの身に起きたと思っていたあまりにも悲しすぎる出来事は、実際には起こっていなかったんだから。

 

でも、安田さんたちはその後ずっと苦しむことになる。

(終盤の戦後のシーンは、戦時中のシーンから何年後のことなんだろう。話していたかもしれないけど聞き漏らしてしまった。勝手に何十年か後のことかなと解釈しています。)

安田さん、戦後何十年間も、復讐相手を見つけては殺しそうになって、その度に「またやってしまった…!」って酷い自己嫌悪に陥りながら生きているのかな。

林さん、自分をつらい目に合わせた張本人にずっと恋し続けて、それをわかっていながらも忘れることができずに生きているのかな。

つらすぎる。生きづらすぎる…

 

持続可能再生兵士(だったかな?)はもちろんフィクションだけど、昔の国の政策によって犠牲になった人は現実にたくさんいる。

パンフレットに載っている対談の中で演出の水田伸生さんが話しているけど、坂元裕二さんはたったひとりの心の折れている人、傷ついている人のために物語を書きたいと言っていたらしい。

まさに、そういうメッセージを感じた。

 

ラストシーンでは、2人とも自分を縛りつけていたアイテム、靴と手袋を置いて帰ろうとするところに、過去からの解放という希望が見えた。

でも、これでハッピーエンドではない。2人の人生は今後も続いていく。

忘れたと思っていても、今後もふと娘の死体や恋焦がれた相手の姿がフラッシュバックしては、苦しくなったりするんだろうな。

 

これまた作中で触れられていたら聞き逃しているのだけど(終盤頭が痛くて、なるべく迷惑にならずに薬を飲もうと音の大きくなるタイミングを伺ってた)、持続可能再生兵士に老いはあるのかな。

戦後に命を落としたら、もう蘇生はされないということになったのかな。

苦しみを背負ったまま永遠に生き続けるのはつらすぎる。

作られた記憶ではなく自分で作った楽しい思い出を胸に、大往生してからちゃんと死んでほしい。

 

そういえば、戦時中のシーンで林さんが言った「戦争が終わったら外で会おう」という言葉。

安田さんは「無理だ」と言ったけど、叶ったね。奢る約束もカレー券で果たせたし。

戦後の2人が友達になって、楽しい思い出をたくさん作れるといいな。

 

そして、2人が厨房の跡地を去ろうとするとき、あの死の笛が2人の前に現れる。

(死の笛って1つしかないのかと思ってた。ちゃんと2人分あったんですね。しかもちょっとデザイン違った。)

まず林さんが、そして安田さんが、笛を吹く。

この笛、生音のように感じたけどどうなんでしょう。

劇中で何度も聴いた音だけど、最後は意味合いが異なっていたから、音色もまるで違って聴こえた。

戦時中のシーンでは「吹くと死ぬ」と信じていたから、恐る恐るだったり、死んでもいいと自棄になっていたり。

ラストシーンでは自分たちを操っていた忌々しい笛だと気づいたからか、魂込めて思いっきり。

狂気すら感じるほどの熱量だった。

吹きながら屋根のセットの上まで上がってしまうので、酸欠でクラクラして落ちないか心配になるくらい。

 

全編を通して、コミカルとシリアスの切り替わりがすごかった。

安田さんと林さんが戯れるシーンはNACS感があって、安田さんはおもしろ俳優のヤスケンさんという感じ。

鼻でリコーダーまで吹いちゃうし。

林さんは、真面目な印象が強かったけどおもしろもできる方だということを今回初めて知りました。

 

このブログでももう何度も語っている気がするけど、私は安田さんの泣きの演技に本当に弱い。

あんなに近くで安田さんの涙を見ることができて感無量です。

なぜあんなに泣けるのか。なぜここまで心を掴まれるのか。

プロだから、演技力が高いから、と言われてしまえばそれまでなのだけど、一作品一作品、舞台だったら1公演ごとに、毎回心を込めてくれている感が伝わってきて、顔を見ているだけでこちらまで涙が出てくるのです。

 

林さんも、演技力すっごいんですね。

特に安田さんに首締められてるときの演技が…!

顔真っ赤だし、鬼気迫る表情だったし、本当に死んじゃうんじゃないかと心配になるほどだった。

また舞台で観られたらいいな。

 

カーテンコールでは2人とも、さっきまで泣いてましたって顔で出てきてくれたのがまたグッときた。

別にそういう意図はないと思うけど、物語に入り込んだまま抜け出せないでいる観客を置いていかないでくれてありがたい。

3回目かな?の手繋ぎカーテンコールはほのぼのかわいらしかったです。

 

しばらくは思い出していろいろ考えてしまいそうな作品。

出会えてよかった。