徒然なるまま

日々の記録

安田顕を堪能する映画『朽ちないサクラ』

杉咲花さん主演、安田顕さん出演の映画『朽ちないサクラ』を観てきたので感想です。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

ミステリーと人間ドラマをちょうどいいバランスで織り交ぜた作品だと思う。

ハラハラする展開、二転三転する真相、少しだけ友情や信頼、親子愛。

 

個人的には、人情味あふれる素敵上司と、目的のためなら殺人をも厭わない黒幕という安田さんの当たり役2つを楽しめる、1作で2度おいしい作品だと思った。

たばこをくわえながら「あんまり考えすぎんなよ」部下を思いやっているようなセリフにときめく。

ただ、真相を知ってから思い返すと、別の意味が込められていたことに気づいてゾクッとする…

他にも、結末を知ってから思い出すとあれってそういう意味だったの!?というところが多々あり、すべてを知った上でもう一度観たい作品。

 

何年も前のカルト教団の事件からすべてが繋がっていて、安田さん演じる富樫が助けた信者が今回の事件の犯人だということがわかる。

何の因果か。この辺り、ちょっと歌舞伎っぽいなと思った。

安田さんの涙にもグッとくる…(私はとかく安田さんの泣きの演技に弱い)

でも、これもすべて必然だった。富樫は、この出来事で出会った信者を自分のエスにしたんだから。

富樫の毒ガス事件への後悔は本心だと思う。事件をきっかけに、富樫の正義観は変わっていってしまったのかな。

 

杉咲花ちゃん演じる泉は、童顔とかわいらしい声に似合わず「陰」な空気をまとっているギャップがいい。

映画の中で笑顔を見られたのは、親友との仲がギクシャクする前の1回だけかな。

だからこそ、私たちも萩原利久くん演じる磯川と一緒で「笑顔を見せて」って気持ちになる。

 

豊原功補さん、渋くてかっこいい!

豊原さん演じる梶山は、最初は言い方キツくて、悪い人じゃないんだろうけど苦手…と思ったけれど、人情味ある上司でよかった。

広報を辞めて刑事になった泉が、梶山の部下になれますように。

 

事前に把握してなかったのだけど、坂東巳之助さんも出てた。

巳之助さん演じる辺見は、この物語のキーマン。

ただラスト、公安の車が来たのを見て釣った魚を海に放すシーン。嫌な予感…と思ったけどその予感は的中してしまった。

自分で飛び込んだ?それとも公安に消された?

その描写はなかったけれど、おそらく命はないよね…

 

おみくじに書いてある和歌

「世の中に たえて桜の なかりせば

 春の心は のどけからまし」

ブログを書くくらい好きな歌だったので、突然出てきて少しびっくりした。

桜の季節の話だったので、ぴったりと言えばぴったりだけど。

この歌の「桜」にはまた別の意味が込められていて、この事件の真相を暗示している。

桜のもつ美しさ儚さ、力強さと狂気みたいなものを上手く利用した表現となっていて、なるほどと唸った。

 

この映画の大きなテーマ「正義とは?」

公安は、1人を犠牲にしてでも100人が助かるならそちらを選ぶ。

これは、果たして正しいのか。

親友を殺された泉が公安を許さないのは当然で、その一方、1人を助けた結果100人を犠牲にしてしまった過去を持つ富樫がこの言葉を言うと、なかなか考えさせられるものがある。

いやでも、映画では詳しく描かれなかったけれど作中の安田さん左手薬指に指輪してたんだよね。富樫にはきっと家族がいる。

富樫は、家族がその1人の犠牲になっても同じことが言えるのか。

あえて映画で指輪をしてたあたり、そのあたりの意図を感じずにはいられなかった。

 

こういう「実は身近な人物が黒幕だった」系の話って、最終的に黒幕は捕まり、主人公に複雑な感情は残れど、一応すっきりした終わりを迎えることがほとんどという印象。

その点、この作品では黒幕ははっきりと悪事を認めた訳ではないし、そもそも悪事か?というところも含めて(感情的には悪なんだけど!)うやむやになって終わるので、すっきりとはしなかった。

ただ、泉の最後の決意と磯川の想いに、未来に続く希望の光は見えたような気がする。

 

今調べたところ、原作には続編があるそう。

朽ちないサクラと合わせて読みたいな。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!