2024年6月に4Kデジタルリマスター版で公開された映画『オペラ座の怪人』を観てきたので感想です。
この映画自体は、観るのはたぶん3度目。
最初は中学か高校の音楽の授業で、2度目は大学生のときか社会人になりたてくらい。
今回、初めて映画館の大スクリーンで観ることができました。
途中から、舞台を観てるのかと錯覚するほどの臨場感。やっぱり大きなスクリーンはいいな〜!
久しぶりだったので、こんなシーンあったっけ?というシーンがちょこちょこあった。
1919年のオペラ座で行われるオークション。
このシーンと、印象的な猿のおもちゃはよく覚えていたけど、参加者の2人がラウルとマダム・ジリーだってことは覚えていなかった。というか気づいていたのかすら怪しい…
1919年のマダム・ジリーは、途中まで1870年のマダム・ジリーと同一人物かと思っていました。よく考えたら年齢が合わない…
わかるまでに時間がかかってしまった。メグのほうですね!
メグは、クリスティーヌにとって本当に大切な存在だったと思う。
マダム・ジリーのもとで姉妹のように育って、クリスティーヌの歌の才能が周りに認められて持て囃されても嫉妬とかせずに変わらず仲良くして。クリスティーヌがいなくなったときには心配して危険を顧みずに探しに行こうとするし。
メグがいなかったらクリスティーヌは孤独だったかもしれない。メグありがとう…!
ミュージカル映画なので当然といえば当然なのだけど、全編に渡って音楽がとってもいい!
いちばん有名なOverture(ジャーン!ジャジャジャジャジャーン!)でゾクっとして一気にオペラ座の世界観に引き込まれる。
ファントムがクリスティーヌの手を引いて地下の隠れ家に連れていくときにかかるThe Phantom Of The Opera(Overtureと同じメロディで歌詞付き)は、ハイハットとベースかな?で8分音符を刻んでいて、ポップスっぽいなあといつも思う。そういう狙いなのかな?少しスローでいろんな角度からクリスティーヌを映す映像も相まって、カラオケのバックで流れる映像みたいだなと思ってしまった(悪い意味ではないです)。
個人的にOverture以上にオペラ座の怪人といえば!の曲はAngel Of Music。いちばん最初に音楽の授業でこの映画を観たときからなんて綺麗な曲なんだろうと思ってた。
女性2人のデュエットってこの作品では唯一かな?クリスティーヌの美しい声とメグのかわいらしい声が良くマッチしてて、心洗われる。
あと、私がいちばん好きなのはMasquerade!
仮面舞踏会で浮き足立つ大人たちのワクワクが伝わってきてこちらまでワクワクする。
今もMasquerade聴きながらこのブログを書いています。
音楽もだけど、音(効果音?)の使い方もとても上手。
明るいシーンでも、ファントムがチラッと姿を見せるのに合わせてほんの一瞬奏でられる不協和音で一気に不安な気持ちになったり。
ティンパニかな?でドン!ドン!と足音みたいな音を表現していて、その間隔が徐々に短くなっていって敵が背後から早歩きで迫ってきているような恐怖を覚えたり。
そういうのが随所に散りばめられていて、さすがミュージカル映画!と思いながら観ていました。
ストーリー的には、今回はファントムに感情移入して観てしまったな〜
幼い頃から容姿のせいで酷い目にあって、死にたいくらい辛かったんじゃないかな。
でも、歌声は天使のように美しくて。
容姿が醜くさえなければステージの上で万雷の拍手を浴びられるような才能があるのに、実際は仮面で顔を隠して地下に身を隠す毎日。
そんな中、初めてクリスティーヌの歌声を聴いたときは、真っ暗だった自分の人生に一筋の光が差したように感じたんじゃないかな。
この子を育てたい。歌に翼を与えたい。
ファントムからクリスティーヌへの愛には、自己投影というか同一視というか、恋愛とはまた別の、重いおも〜い感情も含まれているように感じました。
そうして何年もの間「エンジェル・オブ・ミュージック」としてクリスティーヌを見守り続けてきたのに、いきなり現れたどこの馬の骨かもわからない青年ラウル。
幼馴染だかなんだか知らないが、急に出てきてクリスティーヌと恋仲になろうとするなんて許さない!
ファントムが嫉妬に駆られるのもわかるなあと…
2人の仲を邪魔したくて行動すると、全てが裏目に出てクリスティーヌとラウルは仲を深めていきます。
雪の降る屋上で、クリスティーヌとラウルが想いを確かめ合うシーン。陰でこっそり聴きながら苦しそうな表情をしているファントムを見て、こちらまで苦しくなった…
昔映画を観たときの怖いシーンの印象が強いのか、ファントムってもっと冷徹で狂った人というイメージだったのだけど、このシーンのファントムの表情があまりにも人間らしくて驚いた。
最後の地下のシーンも、ファントム目線ではなかなかつらいものがあった。
どうしてもクリスティーヌを手に入れたくて、クリスティーヌに恋人を見殺しにするか、自分と暮らすかの選択を迫るファントム。
この場面のDown Once More/Track Down This Murdererもいいですよね。
ファントム、クリスティーヌ、そしてラウルが三者三様の想いを抱えて魂込めて歌う曲。言っていることは正反対なのに、熱量が同じなのでとても美しい三重唱になっています。
クリスティーヌは、ファントムにキスをします。
ファントムとしては、おそらくもう何十年も夢にまで見たクリスティーヌとのキス。
こんなに醜い自分とキスできるくらいラウルのことを愛してるのか…と突きつけられるような感情もあったんじゃないかな。
でもクリスティーヌもファントムに対して、恋愛、家族愛、憧れ、同情、憎しみ、憐れみ…いろいろな感情を持っていたんだろうな。
そのキスでクリスティーヌの気持ちが通じたのか、ファントムは早く行け!と2人を解放します。このファントム潔くて好き。
何年も何十年も想い続けてきたクリスティーヌへの想いを懸命に断ち切ろうとする姿に胸をギュッと掴まれた。
クリスティーヌがすぐには立ち去らず、ファントムに指輪を返すのも切ない。
泣き崩れるファントムがとても人間らしくてよかった。
もう一つ今回初めて気になったのは、ファントムとマダム・ジリーとの関係。
ファントムは命の恩人であるジリーにもう少し感謝したり、何なら執着したりしても良さそうなものなのに、そういう感情は湧かなかったのかな。
恩人なんだから、ファントムが暴走してもジリーが止めたら思いとどまるとか、そういう関係性になっても良さそうなものだけど。
それどころか「あのお方を甘く見てはいけない」みたいな台詞もあり、ジリーもファントムを恐れているように見えた。
それに、ジリーはクリスティーヌの歌の先生がファントムだと気づいていたはず。クリスティーヌのことを実の娘のように大切に思っていたのに、危険だと止めなかったのはなぜ?
ジリーはファントムの天才的な芸術センスを知っていたからこそ、オペラ座やクリスティーヌのためにはファントムの力が必要だと考えて、あえて見守っていたのかな。ファントムの悪口を言う人を止めたり地下に踏み込もうとする人を制止したり、ファントムとオペラ座関係者を守りながら…
最後に舞台はまた1919年に戻り、ラウルが亡きクリスティーヌの墓前にオークションで競り落とした猿のおもちゃを供えるシーンで終わる。
事件から50年近く経っているけど、ラウルも、そして亡くなる前のクリスティーヌもファントムのことを忘れていなかったんだな…
そしてラウルが来る前から墓前に置いてある一輪のバラ。
黒いリボンと、クリスティーヌが去るときに返した指輪(かな?)が着けられていて、ファントムを連想せずにはいられません。
ファントムはこのとき生きているとしたら90歳くらい?本人なのか、それとも別の誰かなのか…
余韻を残した終わり方もまたいい。
市村正親さんがファントムを演じたミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』を観ているので、クリスティーヌとラウルのラブシーンを見ても今後の関係を思って少し複雑な気持ちになってしまった。
でも、映画版のクリスティーヌは事件後にラウルと幸せな家庭を築いて、幸せに人生を終えたんだね。よかった…!
この作品を映画館で観られたことに心から感謝です。
音も映像も最高でした!