徒然なるまま

日々の記録

映画『カラーパープル』感想

こんにちは。

ミュージカル映画カラーパープル』を観てきたので、感想を残したいと思います。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

思った以上につらい内容でした…

公式ホームページに掲載されているあらすじでは

横暴な父の言いなりとなったセリーは、父の決めた相手と結婚し、自由のない生活を送っていた。

とされているのですが、「言いなり」とか「自由のない」とかいうレベルではない。虐待です。

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最初は、主人公セリーが産んだ子どもを取り上げた男が誰なのかわからず、セリーが子どもの顔を「私と父さんに似た」と歌ったときにも不思議に感じていたのですが…後から意味に気づいてぞわっとしました。

結婚も望まないものでした。本人不在の場での男たちの取り決めによってあっさり決まってしまう。私だったら耐えられません。

 

つらい生活の中で、セリーの唯一の希望は妹のネティだったのだと思います。

ネティは賢く、男にただでは服従しない性格です。

子どもを2人も産まされたセリーとは違い、父親に襲われたことを理由に家を逃げ出してきています。

ネティと一緒に支え合って暮らしていけると思った矢先、セリーの結婚相手であるミスターのせいで最悪な別れ方をすることとなってしまいます。

ここで、絶望を感じました。

ここまでセリーを見ていて、もっと主張すればいいのに!男に反抗してもいいのに!と思う場面もあったのですが、実際に反抗したネティはミスターに危うく殺されかけ、家を追われたのです。

この世界において男に反抗するということが何を表すのかがこのシーンで表されていて、暗澹たる思いになりました。

 

この物語に出てくる男たちはみんな女を見下しているのか?時代的に仕方ないのか?と思ったところで、ミスターの息子ハーポが出てきます。

ハーポは彼女のソフィアを愛していて、結婚して妻と子どもを幸せにしようと家を建てます。

家を建てるシーンの歌とダンスが、働く男たちの歌!という感じで好きです。レミゼの『囚人の歌』やアナ雪の『氷の心』を思い出しました。女性がメインの映画なので女性の歌が多いですが、男性の歌もいいですね。

ハーポの登場に、やっとまともな男性が出てきた!と喜んだのですが…

こいつも後に「妻を服従させたい」などと言いはじめます。

やはり血は争えないのか…

ハーポのこの言葉に対してセリーは、絶対に言ってはいけないひとことを言ってしまいます。「ぶつの。」

自分は暴力で父と夫に服従させられているのに、ソフィアは夫から1人の人間として尊重されている…

いくらソフィアのことが羨ましかったとしても、ハーポに暴力を振るわせ自分側に引きずり込むのは、やってはいけないことです。

ですが、ここまでのセリーの心情を思うと同情してしまいます。

 

ソフィアは強い女性で、一見すると苦労なんて知らなそうに見えますが、実は親や兄弟、親戚などの男たちに差別を受けてきました。その中で今の強さを身につけたようです。

だからこそ、やっと見つけた信頼できる家族であるハーポに虐げられることは許せないし、現状を変えようと努力せずに自分と同じ立場に引きずり込もうとしたセリーのことも許せなかったのだと思います。

ソフィアはこの一件で家を出ていってしまいますが、ここからハーポとソフィアが付かず離れずの関係なのが個人的に好きです。

お互いに別のパートナーを見つけますが、一度は愛し合った関係。相手を思う気持ちはずっと持ち続けているところがいいです。

 

その後出会うシュグも、セリーを大きく変えた女性です。

彼女は、とても奔放に見えます。

牧師の娘ということもあり、暴力的にとか性的にとかいう虐げられ方はしていないのかもしれません。でも、窮屈だったのかな…

男たちには性的な目で見られ、女には嫌われ。牧師である父に、自分の好きなブルースも認めてもらえません。

そのため、長いこと街を離れていました。

 

そんなシュグが、街に戻ってくる!

このシーン、ミュージカル!って感じでとてもワクワクします。

 

このシュグとの出会いによって、セリーが少しずつ変化します。

2人が一緒に映画を観るシーン、よかったな…

2人のキスには恋愛とか性愛ではなく、もっと深い愛のようなものを感じました。

妹のネティが生きていたことを知れたのも、シュグのおかげです。

 

白人の市長夫妻のシーンも、印象的です。

セリーたちの側に立って観ているともちろん嫌なやつなのですが、そこまで悪気がなさそうなところが逆に気持ち悪い…

黒人は白人に、貧しい者は富む者に仕えるのが当然で、「働かせてあげる」ことはいいことだと心から思っているようでした。

 

ある日、ミスターはセリーをひどく侮辱した後、髭を剃れ!とセリーに命じます。

セリーが震える手でカミソリを持つシーン。

やれ!やっちゃえ!と思わずにいられませんでした。

ミスターは、自分が虐げている相手に刃物を持たせて自分は無防備に目を閉じて、絶対にセリーが自分に歯向かうことはないと高を括っていたのでしょうか。

 

その後の、ミスターの家でみんなが揃うシーンは痛快でした。

セリーはもう男たちの言いなりにならないと決意します。

6年の刑務所生活によりすっかり別人のように暗くなってしまっていたソフィアは、セリーの言葉を聞いて自分を取り戻します。

セリーがミスターに放った台詞、「私を虐げる限り、あなたには不幸が訪れる」。

ここまで長かったけれど、言えてよかった!

 

その後は、なんだかいい感じに物語が展開します。

父が死んで、父のお店がセリーとネティの名義だったことがわかります(同時に、セリーの子どもが実の父親との子ではなかったことがわかって少しほっとしました…)。

 

セリーがパンツ屋さんを開きます。

ここの歌唱シーンすごくよかった!いちばん好きなシーンかもしれないです。

このとき、セリーの顔が別人のように明るくなっていて驚きました。セリー役の俳優さん、すごい!

 

ミスターが雷鳴轟く中で雨に打たれ、畑で倒れるシーン。そのまま死ぬのかと思いました。

ミスターは、意識が朦朧とする中でセリーの「私を虐げる限り…」の言葉を思い出し、神に対し「改めます!」と誓います。

死にたくないばかりに言っているだけかと思いましたが、口だけでなくその後ちゃんと行動に移したのは、まあよかったです。

ネティの帰国のために自分の土地を売ってお金を工面するのも、それをセリーに言わないのも、よかったと思います。

ちょっと急すぎる気はしましたが、やっと改心したようです。

 

ミスターがセリーの店に顔を出し、もう一度やり直さないかというようなことを言いますが、「友達で」と断られます。

あれだけのことをされたのにミスターと友達になれるセリーの懐の深さには感服です。

ミスター、やっと失ったものの大きさに気づいたか!!!

 

終盤、セリーは自らのパーティーにミスターを招待します。

父の葬儀で牧師が話した内容を踏まえると、これはセリーの「赦し」なのだと思います。

私だったら、後から何をしてもらっても受けた仕打ちのことは忘れないし、許せません。セリーの中に神様がいたから許せたのかな…

 

そして、セリーとネティの再会。

生き別れた子どもたちとの再会と、新たな家族との対面。

再会できてよかったし、子どもたちにネティがついていてくれて本当によかったと思いました。

 

ラストの歌唱シーンは、ミュージカルのラスト!という感じで高らかに歌い上げるのではなく「アーメン」で静かに終わったのが新鮮で、とても印象的でした。

 

最後に総括的な感想を。

これは映画なので最後はいい感じに終わりますが、実際には映画のように上手くはいかず、虐げられたまま一生を終えた女性が多くいるかと思うといたたまれない気持ちになります。

ストーリーが重すぎて、観ていてとてもパワーを使うのでまた観たいかと問われると悩んでしまいますが、全編に渡って音楽がとても良く、女性たちが皆かっこいいのは確かです。

一度は観てよかったなと思います。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!