徒然なるまま

日々の記録

映画『夜明けのすべて』感想

こんにちは。

松村北斗さんと上白石萌音さんのW主演映画『夜明けのすべて』を観てきましたので、あっさりめの感想を残したいと思います。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

私がこの映画を観た理由は、主演の2人が好きだったからです。

テーマであるPMSパニック障害に強い関心はなかったし、派手な推理やアクションもなく緩やかに物語が展開していく映画はどちらかというと苦手な部類だったので、観るかどうか悩みました。

ですが、結果的に観てよかったです!

 

まず劇場に入って驚いたのが、客層。

勝手に北斗くんファンの若い女性が多いだろうと思っていたのですが、意外にも50代〜60代くらいのご夫婦が多くてびっくりしました。

主演の2人といえば朝ドラ『カムカムエヴリバディ』での夫婦役なので、それを観ていた方たちでしょうか。

 

私は北斗くんの演技をほぼ見たことがなかったのですが、自然な演技で引き込まれました。

特に序盤の無気力そうな演技ではアイドルオーラを完璧に消していて、現実にこういう人いるな〜という感じ。演技力のある俳優さんです。

萌音ちゃんはとにかく声と喋り方がかわいい。優しさ故の少しおせっかいな先輩役が合っていました。

 

観る前に予想していたとおり、ものすごく大きな展開があるというわけではない、穏やかな映画でした。

私はそういう映画では眠くなってしまうタイプなのですが、この作品は珍しく飽きずに観ることができました。

雰囲気は穏やかではあるのですが登場人物たちはそれぞれ重大な問題を抱えていて、それがもし自分だったら…と考えるとのほほんと観ているわけにはいかない、という感じでしょうか。

 

この映画には、悪い人が1人も出てきません。

優しい人ばかりの栗田科学を引き立たせるのなら、萌音ちゃんと北斗くん(びっくりするくらい役名を覚えていません…)の前職の人たちをもっと意地悪に描くこともできたはず。

ですが、2人に対してつらく当たるような場面は一切出てきません。

萌音ちゃんに苛立ちをぶつけられた上司が「こちらこそごめんね」と謝ったり、仕事中に寝てしまっている萌音ちゃんを見つけた同僚が戸惑いながらも名前を呼びかけるだけだったり。

優しさというよりは、まるで腫れ物に触るかのように接している印象です。

これが妙にリアルだなと思いました…!

 

萌音ちゃんの前職がリアルに描かれているからこそ、栗田科学の温かさが際立ちます。

腫れ物ではなく1人の人間として普通に接してくれて、でも萌音ちゃんの苛立ちや北斗くんの発作が起きてしまったときは迅速に対応してくれて…

最初は、何かしらの事情を抱えた人が集まる会社なのかなと思ったのですが、観た限り萌音ちゃん北斗くん以外はそうではなさそうです(描かれていないだけかもしれませんが)。

弟さんを悲しい理由で亡くした社長の人柄もあって、優しい人が集まっているのかな…

光石研さんは優しいお父さんの役がよく似合いますが、今回の社長も父のように社員を見守る存在で、とてもよかったです。光石さん好き。

 

あとは、萌音ちゃんと北斗くん(の役)、あれだけ距離感が近い2人なのに恋愛に発展しないのもまたいいです。

2人の特殊な関係性によるところが大きいですが、一緒に過ごした期間が短かかったことも影響しているような…

だって、あの顔であの声であの気遣いの北斗くんが身近にいたら、いつかは必ず好きになっちゃいません…?

 

萌音ちゃんはお母さんの介護のため、転職して実家に戻ります。

これにより萌音ちゃんと北斗くんは別々に生きていくこととなりますが、2人の人生はこれからも続いていくんですよね。

病気のせいでつらい思いもたくさんするとは思いますが、ときに失敗しながらも自分の体と上手く付き合っていけたらいいなと思います。

 

メンタル面の病は、一度患うと人生が大きく変わってしまうものだと認識しています。

私の職場でも患って休んで辞める人がそれなりの数いますが、辞めて1か月も経てばその存在は忘れられてしまいます。

言い方は悪いですが「ドロップアウト」だと思っており、自分がそうなる恐怖を常に少しは感じながら働いています。

 

当たり前ですが、患って退職した人の人生はその後も続いていく。

栗田科学のように優しさに溢れた会社はそうないかもしれないけれど、たった1人でも「あなたを助ける」と言ってくれる人がいれば、救われるのかもしれない。

そう思うと少しだけ心が軽くなるような気がしました。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!