徒然なるまま

日々の記録

初めての幕見席も!『髪結新三・紅翫』

歌舞伎座の八月納涼歌舞伎第二部を観てきたので、あっさりめの感想です。

 

梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)髪結新三(かみゆいしんざ)

悪い男のお話だけど、勘九郎さんが演じているからかどこか憎めず、笑いどころもあっておもしろかった。

勘三郎さんのお芝居は映像でしか観たことがないけど、昔から知っている方が「似てきた」というのがわかるくらい新三には勘三郎みを感じたなあ。

幕見席から観たのだけど、遠目で見ると見た目も似ているように感じるし。

江戸っ子!という感じの台詞回しなんかは本当にそっくりだった。

あと、新三のお家のシーンで勘九郎さんが使っているうちわに鰹の絵が描いてあるのが好き。

 

七之助さんの純粋な立役は初めてみたかもしれない。

演じてる時間の大部分は女装しているけど実は男性だったとか、女性に化けているけど実は性別の概念がない神様だったとか、そういうのはあるけど、人間の男性って珍しい。

コロッと騙されてしまうし弱いけど、愛した女性への優しさが伝わってくる繊細な演技で良かったなあ。

 

長三郎くんの出演シーンは一瞬だったけど、「いまにおいらは役者になるんだ!」という台詞よかった。

「芝居小僧」にはもうなってる気がするけどね。

このシーンがいちばん大きな拍手起きてた気がするし、私はなぜか泣きそうになってしまった。

その後パパの手引いていくのもかわいらしかった。

 

弥十郎さんの安定感はすごかったな…

もちろん大御所の貫禄もあるんだけど、若手の誰よりも笑いとろうとしてたよね(笑)

お熊さんを「鶴松に似てたな」と言うところ爆笑してしまった。

小判数えるくだりの弥十郎さん勘九郎さんのやりとりはいつまでも見ていたかった。

 

先月の裏表太閤記のときも思ったけど、巳之助さんは本当に表情豊かな役者さんだなあ。

弥十郎さんと勘九郎さんがやりとりしている間もずっと表情で芝居してて、双眼鏡で見てて目が離せなくなってしまった。

 

開演前に筋書に目を通した限り閻魔堂橋の場で決着はつかないんだろうなと感じていたけど、幸四郎さん勘九郎さんの殺陣はもっと観ていたかったな〜

新作はもちろんこれまで観たことのある数少ない古典もきちんと完結するものばかりだったから、完結しない作品ってこういう終わり方するんだ!と新鮮だった。

こういう「歌舞伎ならでは」の体験が自分にどんどん増えていくことが嬉しい。

 

艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか)紅翫(べにかん)

若手勢ぞろいの踊りで、観ていて楽しかった!

染五郎くんの町娘がかわいくて、歌之助くん大工との美男美女コンビから目が離せなかった。

福之助さんは、踊りはもちろん手ぬぐいを取り出す、朝顔を持ち上げるといった動きの一つ一つがしなやかだったな。

橋之助さんは同世代なので、歴史ある劇場で全員の視線を集めてこんな長時間ひとりで踊って…!と自分と比べてしまって(そもそもスタート地点が違いすぎる)尊敬の念しかありません。

 

あと、この演目は常磐津の方と後見の方も気になった。

常磐津は兼太夫さん。

よくお見かけする方だけど、帰ってから筋書を見て検索してやっとお顔とお名前が一致した。

笑い上戸のシーンとか表情豊かにされていて、目にも耳にも楽しかった。

常磐津ももう少し勉強したいのよな…(先月から言ってる)

 

後見は中村橋三郎さん。

成駒屋一門のお弟子さんで、神谷町小歌舞伎のインスタなどでも度々お見かけする方。

小道具を渡し渡され、衣装を着せて…と橋之助さんとの息がピッタリで、まさに職人技だった。

橋之助さんがヒョイと放った扇子を片手で事もなげにキャッチする姿には惚れ惚れしたな…

後見と黒衣の違いもよくわかっていなかったくらいの初心者なのだけど、こういう影の職人感にはときめいてしまう。

enmokudb.kabuki.ne.jp

 

ストーリーは幕間に筋書をさらっと読んだ程度しか知らなかったのだけど、しっかり背景や流れを理解しているともっと楽しめただろうな。

常磐津の歌詞も筋書に載っているし、事前に読み込めばもっと聞き取れたかも。次回以降の参考にする!

とはいえ、事前知識なくても十分楽しめた。

夏を感じられるさわやかな舞踊でした。

 

初めての一幕見席

今回、一幕見席というものを初めて使ってみた。

4階席ということでもっと観づらいかと思っていたけど、予想以上にしっかりと見えた!

遠いことは遠いけれど、そのぶん舞台全体を見渡せる。

ほぼ真上から見下ろすような角度になるので髪結新三の小判も双眼鏡を使えばきっちり15枚見えたし(あれ1階席から見えてる?)、役者さんの後ろにいる後見さんもバッチリ見えて興味を持つきっかけになった。

 

4階席から観て初めて気づいたけど、3階席にいる大向うさんって花道の揚幕は全く見えていないのよね。

幕が上がった瞬間に屋号を言えるのすごいな…

 

公式の注意書きにも書いてあったとおり、一列目に座ると確かに手すりが邪魔だった。

今回は初めてだったのであえて一列目二列目どちらも試してみたけど、次回以降は二列目を選ぼうと思います。

 

今回は第三部の狐花を観たくて早々にチケットをとっていたのだけど、直前になって一部二部も観たい!と欲が出て(一部は結局時間の都合で諦めた)それならこの機会にと幕見席デビューをしてみたのでした。

今後もこういう使い方は大いにアリ!

いいお席とお安い席を使い分けて、無理のない観劇ライフを楽しもうと思います。