徒然なるまま

日々の記録

歌舞伎の楽しいところ詰め合わせ!『裏表太閤記』

歌舞伎座の七月大歌舞伎夜の部『千成瓢薫風聚光(せんなりびょうたんはためくいさおし)裏表太閤記(うらおもてたいこうき)』を観てきたので感想です。

序幕

悪名高き武将、松永弾正の館の場面からスタート。

弾正を演じる市川中車さん、序盤から悪い顔してて裏切る予感しかしない。

案の定すぐに裏切りました。迫力あるな。

 

明智光秀を演じる尾上松也さん。

バラエティのイメージが強いけど、真面目な役を演じるときはちゃんと歌舞伎役者さんだった(失礼)

声色とかがまるで違っていて、目閉じて聴いたら誰だかわからないくらい。

「馬盥(ばだらい)の光秀」という言葉だけは聞いたことがあったけど、なるほどそういうことか。

あれは屈辱。謀反も納得です。

織田信長役の坂東彦三郎さん、初めてお目にかかったけど、よく通るいい声が印象的だった。

 

ここの場面転換で、こちらのポストで紹介されていた「出投げ」を見られた!

ゴザはとても重いそうで、あんなにまっすぐ投げられるのすごいわ。会場中から拍手が起こっていました。

こういうの、知らなかったら特に気にしないで過ぎていってしまいそうだけど知ってたら楽しみポイントが増えるから、教えてくれてありがとうございますの気持ち。

もちろん自分からも情報取りにいくべきだけど、そもそも知らなければ調べることすらできないものもあるので、有識者の方はこういうのどんどん発信してほしい!

 

織田信長の息子、織田信忠を演じる坂東巳之助さん。

映画『朽ちないサクラ』を観てから気になり始め、割とすぐに歌舞伎で観ることができて嬉しい。

表情豊かな役者さんなんだな。

さっきまで腰元さんたちやお通さんにデレッデレしてたのに、敵が現れたらキリッと引き締まった表情に切り替わる。

緊迫感が感じられてとてもよかった。

 

明智光秀の妹で、信忠の妻(でいいのかな?)お通を演じる尾上右近さん。

右近さんの女形かわいいな!

どちらかと言えば男性的なお顔をしていると思っていたので、あんなに女形が似合うとは予想外。

お通さん、なぜそんなに戦えるのでしょうか。

武将の家の生まれだと、女性も訓練を受けるのかな。薙刀捌きがお見事でした。

赤ちゃんが泣いてしまったときに薙刀キラキラさせてあやすのおもしろい。

一度目は1人でやって、花道で敵に襲われたときも敵に薙刀つかまれた状態でやってたよね。

片手に赤子、片手に薙刀で子守と戦いを同時にするの、器用すぎる。

 

信忠がお通さん大好きなのが伝わってきて、このシーンは終始ニヤニヤだった。

2人とも強いし、アイコンタクトで意思疎通してるし、いいコンビだったな。

信忠が三法師(赤ちゃん)をお通に託して死ぬシーンは切なかった。でもとても美しかった…

 

三法師を狙っている十河軍平。

その手下たちのアクロバットがすごすぎて、目が離せなかった。

斬られてバク宙したり、高く飛び上がったり。

敵だし名もない役だけど、こういう方たちがお芝居に華を添えてくれているんだよなあ。

 

ここで序幕は終わり。

1時間、あっという間だった!

序幕には幸四郎さんも染五郎くんも出ないのですね。

 

二幕目

二幕目もう1回観たい!良すぎたんですけど!

 

市川寿猿さんの94歳ネタには大拍手&大喝采でほんわかムード。

ご本人もおいしいと思ってるのが伝わってきておもしろかった。

こういうのいいな~

 

そしてようやく、松本幸四郎さんと市川染五郎くん親子が登場!

まずは染五郎くん。幸四郎さん演じる重成の息子、鈴木孫市を演じます。

なかなか家に入れなくて草むらに隠れたり、家の周りをうろうろしたりしているのが不憫かわいい。

声はどんどんしっかりしてきていて、踊りは軽やか。

もうすっかり大人の役者さんだな。

 

続いて幸四郎さん。

この場面では軍師の鈴木喜多頭重成を演じていて、重職に就いているだけあり貫禄がすごい。

後に本心でないことがわかるのだけど、この場面では自分(の家)本位で冷徹な男を演じているので、ほぼ無表情。

この場面は、義太夫狂言というのでしょうか。義太夫に合わせて役者さんが台詞を発したり踊ったりする形式で展開していきます。

話の流れもわかりやすいし、テンポが良くて好き。

 

事前に予習してたから話の流れや今後の展開は知っていたけど…

泣きました。

孫市に気づいて、あえて聞かせるように主君に背くトンデモ計画を話す重成。

即座にこの計画を思いついて実行に移せるのは、さすが軍師。

一応孫市のほうから斬りかかってはいるけど、刀が重成のお腹に刺さったのは間違いなく重成自身の意思。

そこで放った台詞「でかした倅」うわー泣いちゃうわ。

重成と孫市の親子物語であると同時に、浅路さん(市川笑三郎さん)と重成親子、関の谷さん(市川笑也さん)と孫市親子の物語でもありました。

なかなか父に手を下せない孫市に、重成がかける言葉とまなざし…

父の命を無駄にしてはいけないと覚悟を決めた孫市のキリッとした表情、よかった。

 

その後の3人で悲しみに浸る場面で、孫市が母と祖母の肩に手をかけてなぐさめるようにするのもよかった。

今後このお家に何かあっても、孫市は命をかけてお母さんとおばあちゃんを守るんだろうな。

 

そしてどこか遠くから、さっきまで聞いていたような声が聞こえてきて本日の主役、羽柴秀吉さんが登場!

首を斬られてから母・妻・息子が悲しんでいる間に急いでお着換えして秀吉になったのかと思うと、少しシュールです。

衣装は豪華だし家来もたくさん引き連れていて華やか!

秀吉は先ほどの重成の行動を知っていてその覚悟を評価し、和睦を受け入れることにしたと。

(見てたなら重成死ぬ前に止めてよとかそういうことは考えてはいけない)

秀吉が孫市に「よき父を持たれたな」と声をかけるところは、あえて声高に台詞を発していて観客一同大爆笑。

孫市の父=重成(さっきまで自分が演じてた)と、染五郎くんの父=自分、という二重の意味がかかっています。

こういう笑いを入れてくれるのが本当にいい。歌舞伎っておもしろい!

 

姫路の陣所の場面では、秀吉、秀吉にお供することになった孫市、三法師を連れたお通さんが集合。

右近さんはやっぱりかわいい&強い。

この場面からの転換すごかったな~!

3人が横一列になったかと思ったら、背景と3人の衣装が同時に早替り。一瞬で海の上の舟へ!

双眼鏡で1人ずつの早替りと背景の転換を代わる代わる観たのですが、いかんせんスピーディーなので追いつかない。

もう1回観たい!あわよくばマルチアングル映像がほしい…

このあたりから、いい意味でストーリーよりも見栄えを重視した、ショーみたいな内容になっていく。

 

舟と海は、3月に観劇した『ヤマトタケル』っぽいなと思っていたら、本当にヤマトタケルになぞらえてお通さんが入水してしまう。

米吉さんの弟橘姫を思い出したな。

とても美しかったし観られてよかったけど、ストーリー的には悲しい。

赤ちゃん残して死なないでよ…

 

そして、満を持して松本白鵬さんご登場!海の神様、大綿津見神(おおわたつみのかみ)を演じます。

もうここでは観客一同、白鵬さんが出てくるのがわかっているのでフライング拍手!

割れんばかりの拍手に迎えられて、本物の神様と見紛うほど神々しい白鵬さんがゆっくりと登場します。

高麗屋三代が揃うシーン、とってもよかったな…

義太夫の中で「高麗へ」みたいな一節があった気がするけど、どうなんでしょう。あったら胸アツ!

その後の空のシーンは、なんだか夢の中みたいだった…

貴重な高麗屋三代のシーン、しっかりと目に焼き付けました。

でも今後、何度も機会がありますよう!白鵬さんいつまでもお元気でいてください。

 

その後、幕外でのお芝居。

内容としては、光秀の家臣である但馬守(市川青虎さん)が秀吉軍に向かって攻めてきた!というだけなのだけど、次のシーンが本水で準備に時間がかかるので結構長めのシーン。

そのぶん観客を飽きさせない工夫が凝らされている。

まずは、兵士のみなさんが列をなして1階席の通路に駆け込んでくる。

剣を掲げて走り抜ける人もいれば、敵味方入り乱れて剣で戦いながら通り抜けていく人たちもいる。

ものすごい迫力だった…!

剣がこっちに飛んできたらどうしようとか、何かの間違いで剣が本物だったらどうしようとか考えてしまった。

そして、頭上からも声が。

私は1階席の後ろのほうにいたので頭上で何が行われていたのか全く見えなかったのだけど、どうやら2階席と3階席にも兵士が現れて台詞の応酬が行われていたらしい(会話は聞こえたけど階を跨いでいたことは知らなかった)。

見えるお客さんみんな楽しそうだった。観たかったな~!

 

それから、今回とても楽しみにしていた本水。映像では観たことがあるものの、生では初めて。

涼しげでめちゃよかったし、事前に観劇レビューか何かで見ていたとおり、幸四郎さんが本当に楽しそう。

滝に打たれながら3人並んで見得を切るところはとてもかっこよかった!

松也さんが幸四郎さん染五郎くん(と見せかけて客席)に向かって足で水をバシャバシャかけていて、前方席のお客さん絶対ビショビショだよね。

楽しそう…!

本水は、想像していたよりも短かった。

もっと長尺で観たかったな~!準備に時間かかるんだからもっと長くやったらいいのに。

でも、水の中に長時間いるのは役者さんの体力的にキツいか。

冷静に考えて、4時間の舞台で水に入ったり飛んだり、幕間も休憩ではなく次の出番の準備をしてるんだろうし。

それを毎日って、すごい体力だ…!

 

これにて二幕目は終了。もう1回観たい!

 

大詰

総じて夢の中みたいだった。

「猿」という共通項だけで秀吉の物語に突然西遊記がぶっこまれるし、「夢であったか」の一言でまた突然戻ってくるし。なんでもアリか!

 

幸四郎さん演じる孫悟空の動き、コミカルでとてもよかった。

歌舞伎の基本は残しつつ、重成や秀吉のときとは全然違う踊りになるのね。

軽やかで、宙乗りの前からすでに宙を舞ってるかのような動き。

二幕目では貫禄がすごかったけど、孫悟空のときは20~30代の若手にも見えたな。

天帝のお屋敷?の欄干にヒョイッと飛び乗ったり飛び降りたりするのもすごく軽やかだし、如意棒捌きもお見事。

技術のある方が本気でふざけると(ふざけてはいないんだけど)いくらでも見ていられるな~と思った。

何より幸四郎さんずーっと笑顔で楽しそうなのが本当に良かった。

 

これは完全に私のミスなのですが、宙乗り楽しみにしてたのに最初のほうしか見えない席をとってしまった…!

ふわっと浮き上がったのを最後に、3階席方向に進んでいくと全く見えない…

壁に映る幸四郎さんの影で、何やらコミカルな動きをしていることはわかったものの、それを生で見たかったよ~という気持ちに…

リベンジしたい…

 

孫悟空だけでなく猪八戒も飛ぶ、ということはXか何かで見て知っていたけど、まさか沙悟浄も浮くとは!

猪八戒役は市川青虎さん、沙悟浄役は市川九團次さんです。

青虎さんの腕力がすごいのか、九團次さんの青虎さんへの信頼がすごいのか。

裏で2人を持ち上げている大道具(機械、スタッフさんともに)がすごいのか。

観ているこっちがヒヤヒヤしてしまうくらいでしたが、本人たちは笑顔。すごい…

盛大な拍手に見送られて、猪八戒だけが旅立って行きました。

 

次に幕が開いたら、そこは大阪城

少し前までふざけていた(ふざけてはいないんだけど)孫悟空は鳴りを潜め、そこにいたのはうたた寝から覚めた秀吉。

さっきまでのキテレツ西遊記はまさかの夢オチだったと。

知ってはいたけど、これは笑わずにいられない。

大阪城大広間の背景はとても豪華だし、秀吉といえばの真っ白な着物はどう見ても位が高い人のそれ。

ここに中車さんを含む3人がやってきて、天下泰平のため三番叟を舞うように秀吉に勧める。

余談ですが、このシーン以後に登場する人たち、徳川家康北政所前田利家といった錚々たる偉人の名前がついているけど正直知っておかなくても影響はないかと思います。

ここからは完全に目と耳で楽しむショーなので、舞台上にいる人たちが誰であろうとあまり関係ないかなと…

知ってたらより楽しめる可能性はあるけど、歌舞伎初心者における予習順位は低めです。ご参考まで。

 

舞台上には義太夫長唄?の方々が勢ぞろい。

(知識がなくなんと呼ぶのかわからない。軽く調べてみたら種類が多すぎて余計混乱した。興味はあるので今後勉強していきたいな。)

www.fujingaho.jp

背景も華やかで、まるで新年のよう。

 

まずは家康(中車さん)たち3人が翁と千歳の舞を。

それから待ちに待った三番叟。

このタイミングで、背景がまた一段と華やかな桜満開の春の景色に変わる。

絵本みたいにぱたんとめくって舞台が変わるのすごかった!

 

三番叟は、まるで映画のエンドロールとか舞台のカーテンコールみたいなお祭り感。

2人ずつ順に登場して舞っていく。

まずは花道から、染五郎くん右近さんコンビが登場。染五郎くんは黄色、右近さんは紫色の衣装を身に着けている。

続いて舞台上手側から、巳之助さん松也さんコンビ。巳之助さんは緑、松也さんは青の衣装。

若いほうから年齢順に出てくるのがいい。まさにカーテンコールみたい。

そしてカーテンコールだったら舞台上の全員に手で招き入れられるところで、幸四郎さんが舞いながら登場。衣装は、肉眼ではオレンジ色に見えたけど、この動画だと赤に見えるな。

幸四郎さん、踊りはやっぱり抜群に上手いし、表情も楽しそうなのがいい。

 

全員が揃うと圧巻。

5色の着物を着た5人が、時には横一列で、時には他の4人が幸四郎さんを囲むようにして、フォーメーションを変えながら舞う。

さっきまでカーテンコールみたいと言っていたけど、5人揃っての舞はもはやアイドルライブだった。

三番叟のシーンだけでいいからペンラ振らせてほしい。私はオレンジを振ります。

 

踊りが揃うときもあれば、2人ずつくらいで違う動きをしているときもあった。

双眼鏡で推しに寄って観たいけど、他のメンバーも観たいし…

目が足りないとはこのことかと思いました。

 

みんなで花道まで来て舞ってくれて、このグループはファンサも充実している。

足を踏み鳴らすのが5人でぴったりと揃っていて、音が会場内で反響してすごい迫力だった。

そういう技術なのだろうけど、孫悟空のふわっと軽やかな着地と、三番叟のダン!という重厚感ある着地が同一人物とは思えなかったな。

最後は再び横一列で舞い、我らがセンター幸四郎さんが一段高くなっている台の上へ。残る4人がそれを取り囲んでみんなでポーズを決め、幸福感に包まれて幕となります。

 

いや〜楽しかった!

楽しいという表現がぴったりな気がする。完成された作品を観ているんだけど、まるで自分が入り込んで体験しているような感覚。

歌舞伎の楽しいところ詰め合わせ!みたいな演目で、ちょっと長めではあるけど歌舞伎初心者(自分含め)も楽しめる作品です。

もう1回観たいよ〜!

 

 

感情を大きく揺さぶられた二人芝居『死の笛』

TEAM NACS Solo Project 5D2、安田顕さんと林遣都さんの二人芝居『死の笛』を観てきたので感想です。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

まず会場に入って、そのコンパクトさにびっくり。

総席数526席ということだけど、機材で結構潰れているので実際はもっと少なかったと思う。

日本一チケットが取れない劇団の名俳優と、これまたファンが多いであろうイケメン俳優の舞台でこのキャパは少なすぎる。

今回SNSでも全滅という人を結構見かけたし、もう少し大きなところでやってもいいのでは…とも思ったけど、安田さんがこの規模でやりたいと思ったことにも意味があるんだろうな。

 

私が観劇した日は、カメラが少なくとも7台は入っていました。

こんなにお金かけて社内の資料映像ってことはないと思うので、媒体は何であれ映像化はされるんじゃないかな。

 

ところで、会場で死の笛Tシャツを着てる人を自分以外にひとりも見かけなかった(スタッフさん除く)。

CUEの現場でよく見かける、onちゃんグッズ身につけてる人もほぼいなかったな。

真面目な舞台なのでうちわとかペンラとかは論外だけど、え、公式Tシャツもはしゃぎすぎ!?私浮いてる!?と焦りました…

 

私の席は「SD列」という聞き慣れないものだったので勝手に後ろのほうと予測して席を探したけどなかなか見つからず。

一旦ロビーに戻って座席表を確認すると、なんとA列より前の補助席!

前から4番目!しかもどセンターでした。

向こう数年分の観劇運を使い果たした気がする。

 

この距離で安田さんにお目にかかること自体ほぼ初めてなんですけど(ジャンボリーのトロッコで一瞬近くに来たことはある)、この距離で安田さんのお芝居浴びるの?

私、飲み込まれるんじゃないかな…

もちろん楽しみなんだけど、楽しみ通り越して少し怖くなってくる。

ドキドキと不安で胃が痛くなった(実際に胃薬飲みました)(直前にラーメン食べたからかもしれない)。

 

前置きが長くなりましたが、ここから本編の感想。今一度、ネタバレにご注意ください。

 

終わって一言めの感想は、

すごいものを観た…

でした。

 

冒頭、安田さんのひとり芝居。

数分間ひとことも発さず、動きと表情のみ。クタクタになりながら料理か何かをしているよう。観客一同、固唾を飲んで見守る。

その後、ようやく台詞が発せられる。

私たちが通常使う言葉とは違っていて、正直最初は聞き取れなかった。

ずっとこの調子で内容入ってこなかったらどうしようと一抹の不安がよぎる。

ただ、大事な内容を何度か繰り返し言ってくれるので大体の意味は掴めた。

どうやら安田さんが演じる役(なんて呼べばいいかわからない)の娘が酷い殺され方をし、その復讐をすると言っているよう。

重い内容に胸をギュッと掴まれる。

 

この辺りで言葉の法則もだいたいわかり、意味が掴めるようになってくる。

たぶん、最初聞き取れないのも制作側の意図じゃないかな。一気に不安な世界観に引き摺り込まれた。

 

その後、林遣都さん登場。

林さんも安田さんと同じ話し方。

内容はわかるけど、どうしてそういう話し方をするのかがまだわからない。

生まれつきなのか、それとも何か理由があるのか…

 

今回の舞台の8割くらいは、そのちょっと違和感のある話し方で進んでいく。

観るほうも集中力が必要だけど、演じるほうはもっと大変だと思う。

単純に、普段の話し言葉と違うので台詞を覚えるのが難しそう。

あと、決して彼ら(登場人物たち)に感情がないわけではないから、単語を並べただけの単調な話し方に感情を乗せないといけないのがすごく難しそうだなと思った。

でも感情めっちゃ伝わってきた。なんなら流暢に話す後半のシーンより感情があふれ出す場面もあったくらい。これが演技力か…

 

2人の間に存在する壁の意味、2人がなぜここにいて、何をしているのか。

決して説明的ではない台詞で、少しずつ明らかになっていくのがすごく上手いなと思った。

 

謎の注射、吹くと死ぬと言われる笛、安田さんの娘と思しき声と、林さんの想い人の家の謎…

安田さんと同じ境遇の「誰か」が書いた手紙。

これらがすべて繋がって真相を知ったとき、私は正直「よかった」と思った。

安田さんの身に起きたと思っていたあまりにも悲しすぎる出来事は、実際には起こっていなかったんだから。

 

でも、安田さんたちはその後ずっと苦しむことになる。

(終盤の戦後のシーンは、戦時中のシーンから何年後のことなんだろう。話していたかもしれないけど聞き漏らしてしまった。勝手に何十年か後のことかなと解釈しています。)

安田さん、戦後何十年間も、復讐相手を見つけては殺しそうになって、その度に「またやってしまった…!」って酷い自己嫌悪に陥りながら生きているのかな。

林さん、自分をつらい目に合わせた張本人にずっと恋し続けて、それをわかっていながらも忘れることができずに生きているのかな。

つらすぎる。生きづらすぎる…

 

持続可能再生兵士(だったかな?)はもちろんフィクションだけど、昔の国の政策によって犠牲になった人は現実にたくさんいる。

パンフレットに載っている対談の中で演出の水田伸生さんが話しているけど、坂元裕二さんはたったひとりの心の折れている人、傷ついている人のために物語を書きたいと言っていたらしい。

まさに、そういうメッセージを感じた。

 

ラストシーンでは、2人とも自分を縛りつけていたアイテム、靴と手袋を置いて帰ろうとするところに、過去からの解放という希望が見えた。

でも、これでハッピーエンドではない。2人の人生は今後も続いていく。

忘れたと思っていても、今後もふと娘の死体や恋焦がれた相手の姿がフラッシュバックしては、苦しくなったりするんだろうな。

 

これまた作中で触れられていたら聞き逃しているのだけど(終盤頭が痛くて、なるべく迷惑にならずに薬を飲もうと音の大きくなるタイミングを伺ってた)、持続可能再生兵士に老いはあるのかな。

戦後に命を落としたら、もう蘇生はされないということになったのかな。

苦しみを背負ったまま永遠に生き続けるのはつらすぎる。

作られた記憶ではなく自分で作った楽しい思い出を胸に、大往生してからちゃんと死んでほしい。

 

そういえば、戦時中のシーンで林さんが言った「戦争が終わったら外で会おう」という言葉。

安田さんは「無理だ」と言ったけど、叶ったね。奢る約束もカレー券で果たせたし。

戦後の2人が友達になって、楽しい思い出をたくさん作れるといいな。

 

そして、2人が厨房の跡地を去ろうとするとき、あの死の笛が2人の前に現れる。

(死の笛って1つしかないのかと思ってた。ちゃんと2人分あったんですね。しかもちょっとデザイン違った。)

まず林さんが、そして安田さんが、笛を吹く。

この笛、生音のように感じたけどどうなんでしょう。

劇中で何度も聴いた音だけど、最後は意味合いが異なっていたから、音色もまるで違って聴こえた。

戦時中のシーンでは「吹くと死ぬ」と信じていたから、恐る恐るだったり、死んでもいいと自棄になっていたり。

ラストシーンでは自分たちを操っていた忌々しい笛だと気づいたからか、魂込めて思いっきり。

狂気すら感じるほどの熱量だった。

吹きながら屋根のセットの上まで上がってしまうので、酸欠でクラクラして落ちないか心配になるくらい。

 

全編を通して、コミカルとシリアスの切り替わりがすごかった。

安田さんと林さんが戯れるシーンはNACS感があって、安田さんはおもしろ俳優のヤスケンさんという感じ。

鼻でリコーダーまで吹いちゃうし。

林さんは、真面目な印象が強かったけどおもしろもできる方だということを今回初めて知りました。

 

このブログでももう何度も語っている気がするけど、私は安田さんの泣きの演技に本当に弱い。

あんなに近くで安田さんの涙を見ることができて感無量です。

なぜあんなに泣けるのか。なぜここまで心を掴まれるのか。

プロだから、演技力が高いから、と言われてしまえばそれまでなのだけど、一作品一作品、舞台だったら1公演ごとに、毎回心を込めてくれている感が伝わってきて、顔を見ているだけでこちらまで涙が出てくるのです。

 

林さんも、演技力すっごいんですね。

特に安田さんに首締められてるときの演技が…!

顔真っ赤だし、鬼気迫る表情だったし、本当に死んじゃうんじゃないかと心配になるほどだった。

また舞台で観られたらいいな。

 

カーテンコールでは2人とも、さっきまで泣いてましたって顔で出てきてくれたのがまたグッときた。

別にそういう意図はないと思うけど、物語に入り込んだまま抜け出せないでいる観客を置いていかないでくれてありがたい。

3回目かな?の手繋ぎカーテンコールはほのぼのかわいらしかったです。

 

しばらくは思い出していろいろ考えてしまいそうな作品。

出会えてよかった。

 

 

最高の夏祭り!ジョビジョバライブ『シン・ロクタロー』

ジョビジョバ 夏のコント祭り in 浅草『シン・ロクタロー』に現地参戦してきたので感想です!

今回は、ありがたいことに「真っ赤なリクエスト祭り/真っ白なマニアック祭り」にそれぞれ1回ずつ入ることができました。配信も観たよ。

 

開演前(赤・白共通)

いつもながら客入れの曲へのこだわりが感じられて、開演前からテンション爆上がり。

曲で季節や会場の場所を感じさせてくれるのが嬉しい。今回は「浅草」「祭り」がコンセプトだったようで。

いまだに美空ひばりのお祭りマンボが頭の中に流れています。

いつものドリフリスペクトも。ドリフも好きなので嬉しかったな〜!

 

開場アナウンスはファーストテイク。

One Night Monkeysのときは確か坂田さん1人だけだったか、2~3人だったか。全員ではなかったので、今回は全員分あって嬉しい。

長谷川さんいい声!

 

オープニングの曲、メロディーは元祖ロクタローのオープニングと同じでテンション上がったし、歌詞には「祭り」「神輿かついで」みたいな語が入ってたから今回新録だよね!?かっこよかった~

 

真っ白なマニアック祭り

最高だった!

マニアックと銘打っているから、知らないコントばかりだったり、新作が自分に刺さらなかったりしたらどうしようと少し不安だったけど、杞憂だった。

いつものジョビジョバ節はそのまま、新たなことにチャレンジしたり既存のコントをブラッシュアップしたりしていた印象。

 

映像でしか観たことのなかったミッキーさんとキネマの天使を初めて生で観られて嬉しかったな。

写真はこちらのページからお借りしました

数日前にシン・ロクタローの予習としてロクタロー(白盤)のDVDを観ていて、ちょうどキネマの最終回でウルウルしてたところだった。それが、まさか続編が観られるなんて…!

学生こんなに立派になって…!と感動しきりだった。

映像の場合、カメラがパンして3人がフレームアウトして終わるけど、舞台だとそれができずぬるっと終わるから拍手のしどころがわからなかった(笑)

拍手起きなかったけど本当によかった!とご本人たちに伝えたいです。

写真はこちらのページからお借りしました

ミッキーさんと、マギーさんが歌うシリーズ(今回は柴田恭兵)は、マギーさんのボケに素で笑っちゃってる長谷川さんが好き。

久しぶりのスポーティも!

 

石倉さんと明水さん(今回はいなかったけど六角さんも)のチャレンジ企画、ジョビジョバを知った頃は正直よくわからなかったのだけど(笑)、今ではすっかり虜になってしまった。

困惑しつつ頑張る2人と、爆笑しながら無茶ぶりする悪魔のようなマギーさんと、笑いながら2人を気遣う長谷川さん。いいバランス。

音のきっかけを自分で出すことにしたマギーさんにも、今回(私の知る限りでは)初めて巻き込まれた長谷川さんにも笑った。

 

六角さんに任された30秒は「1、2、3、ダァーッ!」でよかったのかな?笑

生で観たときは、何も出てこず苦し紛れで言ったのかと思ったけど(失礼)、配信で観た最終日もそうだったのでそういう演出だったのかもしれない。

その前の、ひとりで数十秒踊るところはなんかかわいくて好きです。もっと長尺で観たい。

 

マギーさんも絶賛していたけど、今回石倉さんがかなりよかった!

滑舌悪くていじられるのもおもしろいけど、ちゃんと技量で笑わせてくれる感じがこれまででいちばん好きだったな。

再起動後、初期の頃は他のメンバーに対して少し引け目を感じているように見えた。

経験あるとはいえブランクが長いし、ずっと役者(とお坊さん)として活動している人たちばかりの中でいきなり会社員が舞台に立つんだから、当然なんだけど。

それが、今回の舞台では人前に立つ自信を取り戻してるように見えたな。

もちろん技量も上がったのかもしれないけど、もともと技量はある方なので慣れとか心持ちの影響が大きいのではないかと感じました。偉そうに語って申し訳ない!

冗談ぽく、マギー「今度俺の作品にオファーしてもいいですか?」石倉「ギャラ次第で」というやりとりがあったけど、マギーさんはこういうのを実現させる人だから期待してます。

レギュラーは難しいだろうけど、ドラマのゲスト1話だけでも!

 

今回の祭りの主軸となっている神輿のコント、内容については後で触れるけど、私が観た回では長谷川さんが六角さんの役名を間違えたのが珍しくて「おっ!」となった。

長谷川さん、おもしろいこともできるし周りを見て必要と判断すればいじられ側に回ることもできるけど、素のミスをあまりしない優等生なので…

本人的には不本意だったかもしれないけど、人間らしいところを垣間見ることができて長谷川さん推しとしてはニヤッとしてしまった。

「六角さん…いや、六車さん!」と、さすがの修正力でした。

 

今回は幕前でのおしゃべりコントからスタートしたり、各コントの合間にトークを挟んでいることもあって、いつもよりラフな印象だった。

個人的にはバチバチのオープニング映像と暗転中のテンポ良い転換が大大大好きなので、そういう要素が少なめで少し物足りない感じもありつつ、これはこれでアットホーム感があってよかった。

 

さて、白が終わり、夜は赤!

赤のほうが「ポップでキャッチーでメロディアス」ということなので、それも楽しみ!

写真はこちらのページからお借りしました

 

真っ赤なリクエスト祭り

これまた最高だった!

白は席がいちばん後ろの端だったので俯瞰で観ることができてそれはそれでよかったけれど、少しだけ寂しかった。

赤は、5列目の真ん中あたり。ステージ近くて嬉しかった!

 

白は幕前でのおしゃべりコントから始まったけど赤はいつものようにバチバチのオープニング映像から始まり、やっぱりジョビジョバのスタンダードってこうだよねと嬉しくなった。

その上で、新しい始め方に挑戦したのが白だったんだな。

私は赤スタイルが好きだけど、どちらも良い!

 

マイティ菅原では、殺陣師の馳氏をまた観られて感無量。

マギーさん演出の舞台『鍵泥棒のメソッド→リブート』に出てきたキャラです。

すごく好きだったけど、まさか再会できるとは!

これからジョビジョバのレギュラーキャラになっていったら嬉しいな。

 

その後のほっかむりちゃんはおもしろかわいくて、馳氏からの落差がすごかった。

「な~らやってもいいけどぉ~♪」

独壇竜政宗(漢字これでいいのかな?)以上に長谷川さんの独壇場でした。

 

「僕とお父さん」タイトルだけではピンと来なかったけど、観てるうちに思い出した。U-1でやってたやつですね。

坂田さん長谷川さんを囲む4人の泣き笑いの表情が上手すぎて、観ているこっちまでそんな顔になる…

観客の中にすすり泣いてる人も結構いたような。

 

今回、構成は異なるものの赤と白とで同じコントがあったり、私自身2日目を現地で、3日目を配信で観たのでオチを知っているものもたくさんあって。

この「僕とお父さん」の中で「オチがわかってても笑えるものとそうでないものの違いは何か?」の問いに「役者の技量と役者への期待値」と答えるシーンがあったけど、まさにそうだと思った。

展開がわかってるのに新鮮に笑えるのってすごいよな〜と思いながら観てました。

そしてこの台詞を、配信も観てねって宣伝する側が言ってるのがすごいのよ。

自信があるからこそ言える台詞。そういうところも本当にかっこいい!

 

明水さんの黒タイツショー、昼は下手側のお客さんに「ワッ!」とやっていたから、夜に下手寄りの席だった私かなり期待したのですが、今度は上手側のお客さんにやっていました。残念…!

なんだかんだで明水さんがいちばんファンサというか、観客の目を見て話してくれる印象がある。さすが住職(?)

黒タイツショーの中では、最終日の配信で観た「忍術」がかなり好きだったな(笑)ぜひとも生で観たかった。

「紅だー!」は、現地と配信合わせて(赤のアンコールがあったので)、計6回観たけど、5回目まで本当に何言ってるのかわからなかった(笑)

3日目昼にマギーさんに注意されたからか、大千穐楽はやけにはっきりと言っていたのがまたおもしろかった(笑)

明水さんがいつか仏教の偉い人から怒られないか心配です。

 

めんたい兄弟も観られて嬉しかったな〜

明水さんの熊本弁好き。

 

2日目夜の赤では結構序盤から長谷川さんの声が怪しく、途中で出なくならないか心配だった。

それだけ全力でやってるということだし、昼の神輿のコントの熱の入れようも観てたからかなりグッときたな。

マギーさんいわく、翌日の朝にはスッと声が出るということなので(本人はわからないと言ってたけど)、帰ってからちゃんとケアしてるんだろうな。

さすがプロ!ナイスガイ!

まあ、あれだけ声を張ることはないかもしれないけど他の舞台はもっと長期間続いたりもするもんね…

改めてプロの役者さんのすごさを実感しました。

 

赤・白共通

大好きなYEAH!のコント、厨房と暴走族どちらも観られて嬉しかった!

写真はこちらのページからお借りしました

直前にロクタローのDVDで予習してたこともあって、レアだという名刺交換もハンバーグも(ハンバーグは配信だけど)始まった瞬間に「おおー!」と喜べた。

マギーさんが「あんなんやりたい」と言っていたやつですよ。「おおー!」側もなかなか嬉しいものがある。

 

ほぼ出ずっぱりのマギーさん長谷川さん坂田さんは袖で水分補給する暇もないのか、舞台上でさりげなく水を飲んでいて、それだけ過酷なんだなと思うと同時に、水分補給ポイントを作る上手さに感心してしまった。

 

少し前にYouTubeで配信してたOne Night Monkeysは、not役者組の生の出番がそこまで多くなく、合間のVTRで工夫してみんな出てる風にしているなという印象だった。

それはそれで上手いな~と思っていたけど、今回は2人もガッツリ出演していてすごかった。

特に石倉さん!

キネマとか雷おこしとか、セリフ量も多ければ専門的な用語も多く、本業の傍らこんなに覚えたの!?と驚いた…

同じ会社員として尊敬しかないです。

(R6.8.3追記 今さらながらOne Night Monkeysのネタ解説動画を観て、楽屋の映像がVTRではなく生だったことを知る。当時から出演時間長かったんだな明水さん

 

ビギンは昼も夜も坂田さんの大優勝!

「しどろもどろ」と「がんじがらめ」。

どちらも坂田さんの今の気持ちを歌った素敵な曲でした(笑)

 

そして、今回の祭りの核となる神輿のコント。

ほんっとうによかった!

マギーさんの得意とする、くだらないはずなのになぜか感動させられてしまうコント。

今回もまんまとマギーさんの手のひらで転がされたな。

私には金色の大きな鳳凰が見えたよ!

3日目の配信が始まるとき、神輿を担ぐ男たちがデザインされた劇場の幕が映ったのを観てジョビジョバオリジナル?と混乱してしまったほど(笑)、この祭り期間でジョビジョバ=神輿と刷り込まれた。

 

そしてそして、このコントといえば長谷川さんですよね。

マギーさんに「ペース配分考えてよ」と言われるほど序盤から(たぶん初日から)声が出なくなるほど魂込めまくった熱演。

長谷川さんの台詞「いい大人がバカバカしいことを真剣にやる。最高じゃないですか!」グッときたな。

ヘヴンズストーリー、真田丸に次ぐ彼の代表作になるのではないでしょうか。

 

このコントが良すぎて、ジョビジョバにガチの演劇やってほしい欲が出てきてしまった…!

笑いあり涙ありの、2時間くらい通しのやつ。

コントも大大大好きだけど!むしろジョビジョバといえばコントだけど!

演劇もできるじゃないですか…

映像でしか観たことないけど、昔やってたよね。ジョビジョバ大ピンチとか。

NACSの悪童を観てジョビジョバを思い出したファンは多かったはず。

遠方組もいるしみんなそれぞれ忙しいので難しいとは思うけど、いつか叶ったらいいな。

 

当日観るまで、衣装のツナギが赤と白で変わることを知らなかった。これいいね!

赤は見慣れてるけど、白もかっこよくて素敵だった!

 

知らなかったとか言ったけど、思いっきり自分でリポストしてるマギーさんの投稿に赤白2パターンの写真載ってるな…

 

トークのときに隣に長谷川さんがいるとやりやすいマギーさん。マギーさんって本当に長谷川さんのこと信頼してるんだなあ。

マギーさんの繰り出す「微妙」な回答が刺さりまくる長谷川さん。長谷川さんって本当にマギーさんのセンスが好きなんだなあ。

この2人が中心となってジョビジョバが発展したのがよくわかる気がする。

だからこそ、マイティさんがふざけ倒して馳氏が笑いながらツッコんでるの、本当に幸せな光景だった。

 

マギーさんが大千穐楽ラストの挨拶で言った「おじさんたちまだまだやりますのでついてきてください!」嬉しかったな。

常に進化、いや「あっぷでーと」し続けるおじさんたちに、どこまででもついていきます!

その後、みんなで手繋いでお辞儀するのもよかった。

こういうのを照れずにやってくれる明水さんがいるの、ありがたいなぁ。

 

あー楽しかった!次回も楽しみ!

 

 

安田顕を堪能する映画『朽ちないサクラ』

杉咲花さん主演、安田顕さん出演の映画『朽ちないサクラ』を観てきたので感想です。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

ミステリーと人間ドラマをちょうどいいバランスで織り交ぜた作品だと思う。

ハラハラする展開、二転三転する真相、少しだけ友情や信頼、親子愛。

 

個人的には、人情味あふれる素敵上司と、目的のためなら殺人をも厭わない黒幕という安田さんの当たり役2つを楽しめる、1作で2度おいしい作品だと思った。

たばこをくわえながら「あんまり考えすぎんなよ」部下を思いやっているようなセリフにときめく。

ただ、真相を知ってから思い返すと、別の意味が込められていたことに気づいてゾクッとする…

他にも、結末を知ってから思い出すとあれってそういう意味だったの!?というところが多々あり、すべてを知った上でもう一度観たい作品。

 

何年も前のカルト教団の事件からすべてが繋がっていて、安田さん演じる富樫が助けた信者が今回の事件の犯人だということがわかる。

何の因果か。この辺り、ちょっと歌舞伎っぽいなと思った。

安田さんの涙にもグッとくる…(私はとかく安田さんの泣きの演技に弱い)

でも、これもすべて必然だった。富樫は、この出来事で出会った信者を自分のエスにしたんだから。

富樫の毒ガス事件への後悔は本心だと思う。事件をきっかけに、富樫の正義観は変わっていってしまったのかな。

 

杉咲花ちゃん演じる泉は、童顔とかわいらしい声に似合わず「陰」な空気をまとっているギャップがいい。

映画の中で笑顔を見られたのは、親友との仲がギクシャクする前の1回だけかな。

だからこそ、私たちも萩原利久くん演じる磯川と一緒で「笑顔を見せて」って気持ちになる。

 

豊原功補さん、渋くてかっこいい!

豊原さん演じる梶山は、最初は言い方キツくて、悪い人じゃないんだろうけど苦手…と思ったけれど、人情味ある上司でよかった。

広報を辞めて刑事になった泉が、梶山の部下になれますように。

 

事前に把握してなかったのだけど、坂東巳之助さんも出てた。

巳之助さん演じる辺見は、この物語のキーマン。

ただラスト、公安の車が来たのを見て釣った魚を海に放すシーン。嫌な予感…と思ったけどその予感は的中してしまった。

自分で飛び込んだ?それとも公安に消された?

その描写はなかったけれど、おそらく命はないよね…

 

おみくじに書いてある和歌

「世の中に たえて桜の なかりせば

 春の心は のどけからまし」

ブログを書くくらい好きな歌だったので、突然出てきて少しびっくりした。

桜の季節の話だったので、ぴったりと言えばぴったりだけど。

この歌の「桜」にはまた別の意味が込められていて、この事件の真相を暗示している。

桜のもつ美しさ儚さ、力強さと狂気みたいなものを上手く利用した表現となっていて、なるほどと唸った。

 

この映画の大きなテーマ「正義とは?」

公安は、1人を犠牲にしてでも100人が助かるならそちらを選ぶ。

これは、果たして正しいのか。

親友を殺された泉が公安を許さないのは当然で、その一方、1人を助けた結果100人を犠牲にしてしまった過去を持つ富樫がこの言葉を言うと、なかなか考えさせられるものがある。

いやでも、映画では詳しく描かれなかったけれど作中の安田さん左手薬指に指輪してたんだよね。富樫にはきっと家族がいる。

富樫は、家族がその1人の犠牲になっても同じことが言えるのか。

あえて映画で指輪をしてたあたり、そのあたりの意図を感じずにはいられなかった。

 

こういう「実は身近な人物が黒幕だった」系の話って、最終的に黒幕は捕まり、主人公に複雑な感情は残れど、一応すっきりした終わりを迎えることがほとんどという印象。

その点、この作品では黒幕ははっきりと悪事を認めた訳ではないし、そもそも悪事か?というところも含めて(感情的には悪なんだけど!)うやむやになって終わるので、すっきりとはしなかった。

ただ、泉の最後の決意と磯川の想いに、未来に続く希望の光は見えたような気がする。

 

今調べたところ、原作には続編があるそう。

朽ちないサクラと合わせて読みたいな。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

 

 

壮大な歴史と海に圧倒された2日目午後【北陸ひとり旅 #4】

こんにちは。

前回に引き続き、北陸ひとり旅の2日目を振り返っていきます。

1日目の様子はこちら。

nonnopan.hatenablog.jp

前回の記事はこちら。

nonnopan.hatenablog.jp

 

 

ひがし茶屋街

ひがし茶屋街は、金沢でいちばんポピュラーと言っても過言ではない観光地です。

先ほどの主計町茶屋街 とは違い、どこもかしこも人で溢れかえっています。

 

有名な通り。

 

趣ある建物がたくさん。

 

結婚式の前撮り(?)をしているカップルがいました。

顔が見えないのをいいことに、勝手に被写体にさせていただく(笑)

 

志摩

こちらは、国指定重要文化財の「志摩」。

公式HP:http://www.ochaya-shima.com/

 

文政3(1820)年に建てられ、当時のまま残っているお茶屋の建物です。

入館料500円で中を見学することができます。

文化財保護のため大きな荷物の持込みはできませんが、入口のロッカー(確か無料だったような…)で預けられるので安心です。

写真撮影も可能ですが、上記の理由から大きなカメラは使用不可のため、スマホでの撮影のみとなります。

こういういかにもお茶屋!という建物は時代劇で観たことがあっただけで、実物を見るのは初めてだったのでテンションが上がりました。

 

建物の構造もおもしろく、通りに面した2階に縁があったり(簾がなかったら通りから丸見えだと思うのですが、当時から簾はあったのでしょうか?)、

 

小さめの中庭をぐるりと建物が取り囲んでいて、中庭を挟んで会話ができそうです。

こういう建物ってなんだかワクワクします。

 

箔一

ひがし茶屋街にある「箔一」で休憩。

goldicecream.hakuichi.co.jp

金沢では古くから金箔の生産が盛んで、現在は国内シェアの98%を金沢産が占めると言われています。

箔一は金箔製品などを取り扱うお店ですが、観光客に人気なのはこちらの「金箔のかがやきソフトクリーム」!

891(ハクイチ)円。

言ってしまえば金箔が貼られているだけのソフトクリームなのですが、ゴージャスな見た目が旅行の高揚感を煽ります。

 

目の前でお姉さんが金箔を貼って提供してくれるので、目でも楽しめるデザートです。

 

味ももちろんおいしかったですし、この日は暑くて汗をかきながら歩き回っていたので、冷たいソフトクリームが沁みました…!

お店の中に座って食べられるスペースがたくさんあるのも嬉しいポイント。

 

さて、ひがし茶屋街を満喫したので、次の目的地までバスで移動します。

写りが悪いのですが、バスで通った犀川大橋

 

妙立寺(忍者寺)

続いての目的地はこちら。妙立寺(みょうりゅうじ)!

公式HP:http://www.myouryuji.or.jp/

 

忍者寺とも呼ばれるこのお寺は、加賀藩の三代藩主、前田利常が創建したそう。

幕府からの攻撃を想定し、随所に敵を欺くからくりが施されています。

 

拝観料は大人1,200円。

必ず拝観したい場合は、事前の電話予約が必須です。

私はそれを知らずに行ってしまったのですが、当日に現地で予約することができました。

ただし、当日予約は空きがある場合のみということなのでご注意ください。

 

堂内は撮影禁止のため、中の様子はこちらのページをご覧ください。

www.hot-ishikawa.jp

 

20名程度(かな?)のグループに分けられ、1組につき1人のガイドさんがついて説明してくださいます。

見ただけではわからないからくりの仕組みや、なぜその仕組みが必要だったのかを丁寧に説明してくださって、とてもおもしろかったです。

そして何より、建物内の構造が複雑すぎて、「1度入ったら中からは開けられない部屋」なんかもあるので、ガイドさんがいなければ絶対に行方不明になります。こわ…!

 

にし茶屋街

妙立寺を出て、そのまま徒歩でにし茶屋街へ。

これで金沢の主要な茶屋街は制覇です。

 

にし茶屋街は、ひがし茶屋街を少し静かにしたような感じ。

観光客向けのお店もありますが、ひがし茶屋街ほど多くはないので通りが人で溢れているということはなかったです。

 

西検番事務所の建物がレトロでかわいい。

 

そして「桜桃 -ゆすら-」で2度目の休憩。

公式HP:http://yusura.cafe

 

つい数時間前にソフトクリームを食べたばかりではありますが、あまりにも暑いので加賀棒茶のジェラートをいただきました。

 

せっかく石川県にいるので加賀棒茶を味わえて嬉しい。

お茶が香ってとてもおいしかったです!

 

朝からお寿司をお腹いっぱい食べ、夜もガッツリの予定なので、お昼はこれだけで我慢…!

ひとり旅歴も長くなり、食べ過ぎで体調を崩すこと数知れず…

こういう調整ができるようになったことに、自分の成長を感じます(笑)

 

金沢港クルーズターミナル

さてさて、次の目的地は少し変わり種。

一度金沢駅に戻り、バスに乗ること約30分。

金沢港クルーズターミナルに到着。

 

豪華客船 「飛鳥Ⅱ」が寄港しており、この日に出港ということだったので、お見送りイベントに参加してきました!

ターミナルは2020年にできたばかりということで、新しくて綺麗です。

 

そして飛鳥Ⅱですが、全長241メートルもあるそうで、ものすごい迫力です。

 

ターミナルから見るとこんな感じ。

洋上のホテルとも呼ばれるだけあって、もはや建物です。

 

船を繋ぐロープを外したり、タラップを引き上げたりする人をつい目で追ってしまいます。

 

タグボートは「けんろく」というよう。さすが金沢!

 

お見送りイベントでは、三味線の演奏が行われました。

 

銅鑼や船の汽笛も鳴り響き、賑やかな出発!

誰ひとりとして知り合いは乗っていないのに、全力で手を振ってお見送りします。

 

大きな船がゆっくりゆっくり遠ざかっていく様は、どこか現実離れしていて不思議な光景でした。

 

お見送りも済んだので、金沢市街に戻ります。

 

グリルオーツカ

バスを乗り継ぎ、香林坊で下車します。

徒歩3分ほどで「グリルオーツカ」に到着!

 

金沢名物「ハントンライス」発祥のお店とも言われている、昭和32年創業の洋食店です。

お店に入ると、所狭しと有名人のサインが…!お店の人気を伺わせます。

 

メニューの「ボリュームがあるので女性の方には小さいサイズがおすすめです」にびびり、ハントンライス(小)を注文。

 

ハントンライスは、オムライスの上に白身魚のフライをのせ、ケチャップとタルタルソースをかけた食べ物。

ハンガリーの「ハン」と、フランス語でマグロを意味する「トン」から名付けられたそうです。

運ばれてきたのはこちら!

 

一見するとオムライスのようですが、ソースに隠れて白身魚のフライがのっています。

3つだったかな?

見た目以上にボリューミーでした。

ガッツリのつもりでお昼を抑えめにしておきましたが、それでも小を頼んで正解!

お店の人のおすすめは素直に聞くものですね(笑)

肝心のお味ですが、もちろんおいしかった!

ふわとろオムライスとサックサクのフライが当然のようにそれぞれおいしく、相性もバッチリでした。

金沢以外でも日常的に食べられればいいのに!

 

お腹いっぱい食べたのでホテルに戻ります。

2日目お疲れ様でした!

 

おまけ

野菜不足を感じて、トマトジュースで晩酌。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

 

 

映画館で観られたことに感謝『オペラ座の怪人』

2024年6月に4Kデジタルリマスター版で公開された映画『オペラ座の怪人』を観てきたので感想です。

 

この映画自体は、観るのはたぶん3度目。

最初は中学か高校の音楽の授業で、2度目は大学生のときか社会人になりたてくらい。

今回、初めて映画館の大スクリーンで観ることができました。

途中から、舞台を観てるのかと錯覚するほどの臨場感。やっぱり大きなスクリーンはいいな〜!

 

久しぶりだったので、こんなシーンあったっけ?というシーンがちょこちょこあった。

1919年のオペラ座で行われるオークション。

このシーンと、印象的な猿のおもちゃはよく覚えていたけど、参加者の2人がラウルとマダム・ジリーだってことは覚えていなかった。というか気づいていたのかすら怪しい…

1919年のマダム・ジリーは、途中まで1870年のマダム・ジリーと同一人物かと思っていました。よく考えたら年齢が合わない…

わかるまでに時間がかかってしまった。メグのほうですね!

 

メグは、クリスティーヌにとって本当に大切な存在だったと思う。

マダム・ジリーのもとで姉妹のように育って、クリスティーヌの歌の才能が周りに認められて持て囃されても嫉妬とかせずに変わらず仲良くして。クリスティーヌがいなくなったときには心配して危険を顧みずに探しに行こうとするし。

メグがいなかったらクリスティーヌは孤独だったかもしれない。メグありがとう…!

 

ミュージカル映画なので当然といえば当然なのだけど、全編に渡って音楽がとってもいい!

いちばん有名なOverture(ジャーン!ジャジャジャジャジャーン!)でゾクっとして一気にオペラ座の世界観に引き込まれる。

ファントムがクリスティーヌの手を引いて地下の隠れ家に連れていくときにかかるThe Phantom Of The Opera(Overtureと同じメロディで歌詞付き)は、ハイハットとベースかな?で8分音符を刻んでいて、ポップスっぽいなあといつも思う。そういう狙いなのかな?少しスローでいろんな角度からクリスティーヌを映す映像も相まって、カラオケのバックで流れる映像みたいだなと思ってしまった(悪い意味ではないです)。

個人的にOverture以上にオペラ座の怪人といえば!の曲はAngel Of Music。いちばん最初に音楽の授業でこの映画を観たときからなんて綺麗な曲なんだろうと思ってた。

女性2人のデュエットってこの作品では唯一かな?クリスティーヌの美しい声とメグのかわいらしい声が良くマッチしてて、心洗われる。

あと、私がいちばん好きなのはMasquerade!

仮面舞踏会で浮き足立つ大人たちのワクワクが伝わってきてこちらまでワクワクする。

今もMasquerade聴きながらこのブログを書いています。

 

音楽もだけど、音(効果音?)の使い方もとても上手。

明るいシーンでも、ファントムがチラッと姿を見せるのに合わせてほんの一瞬奏でられる不協和音で一気に不安な気持ちになったり。

ティンパニかな?でドン!ドン!と足音みたいな音を表現していて、その間隔が徐々に短くなっていって敵が背後から早歩きで迫ってきているような恐怖を覚えたり。

そういうのが随所に散りばめられていて、さすがミュージカル映画!と思いながら観ていました。

 

ストーリー的には、今回はファントムに感情移入して観てしまったな〜

幼い頃から容姿のせいで酷い目にあって、死にたいくらい辛かったんじゃないかな。

でも、歌声は天使のように美しくて。

容姿が醜くさえなければステージの上で万雷の拍手を浴びられるような才能があるのに、実際は仮面で顔を隠して地下に身を隠す毎日。

そんな中、初めてクリスティーヌの歌声を聴いたときは、真っ暗だった自分の人生に一筋の光が差したように感じたんじゃないかな。

この子を育てたい。歌に翼を与えたい。

ファントムからクリスティーヌへの愛には、自己投影というか同一視というか、恋愛とはまた別の、重いおも〜い感情も含まれているように感じました。

そうして何年もの間「エンジェル・オブ・ミュージック」としてクリスティーヌを見守り続けてきたのに、いきなり現れたどこの馬の骨かもわからない青年ラウル。

幼馴染だかなんだか知らないが、急に出てきてクリスティーヌと恋仲になろうとするなんて許さない!

ファントムが嫉妬に駆られるのもわかるなあと…

2人の仲を邪魔したくて行動すると、全てが裏目に出てクリスティーヌとラウルは仲を深めていきます。

雪の降る屋上で、クリスティーヌとラウルが想いを確かめ合うシーン。陰でこっそり聴きながら苦しそうな表情をしているファントムを見て、こちらまで苦しくなった…

昔映画を観たときの怖いシーンの印象が強いのか、ファントムってもっと冷徹で狂った人というイメージだったのだけど、このシーンのファントムの表情があまりにも人間らしくて驚いた。

 

最後の地下のシーンも、ファントム目線ではなかなかつらいものがあった。

どうしてもクリスティーヌを手に入れたくて、クリスティーヌに恋人を見殺しにするか、自分と暮らすかの選択を迫るファントム。

この場面のDown Once More/Track Down This Murdererもいいですよね。

ファントム、クリスティーヌ、そしてラウルが三者三様の想いを抱えて魂込めて歌う曲。言っていることは正反対なのに、熱量が同じなのでとても美しい三重唱になっています。

クリスティーヌは、ファントムにキスをします。

ファントムとしては、おそらくもう何十年も夢にまで見たクリスティーヌとのキス。

こんなに醜い自分とキスできるくらいラウルのことを愛してるのか…と突きつけられるような感情もあったんじゃないかな。

でもクリスティーヌもファントムに対して、恋愛、家族愛、憧れ、同情、憎しみ、憐れみ…いろいろな感情を持っていたんだろうな。

そのキスでクリスティーヌの気持ちが通じたのか、ファントムは早く行け!と2人を解放します。このファントム潔くて好き。

何年も何十年も想い続けてきたクリスティーヌへの想いを懸命に断ち切ろうとする姿に胸をギュッと掴まれた。

クリスティーヌがすぐには立ち去らず、ファントムに指輪を返すのも切ない。

泣き崩れるファントムがとても人間らしくてよかった。

 

もう一つ今回初めて気になったのは、ファントムとマダム・ジリーとの関係。

ファントムは命の恩人であるジリーにもう少し感謝したり、何なら執着したりしても良さそうなものなのに、そういう感情は湧かなかったのかな。

恩人なんだから、ファントムが暴走してもジリーが止めたら思いとどまるとか、そういう関係性になっても良さそうなものだけど。

それどころか「あのお方を甘く見てはいけない」みたいな台詞もあり、ジリーもファントムを恐れているように見えた。

それに、ジリーはクリスティーヌの歌の先生がファントムだと気づいていたはず。クリスティーヌのことを実の娘のように大切に思っていたのに、危険だと止めなかったのはなぜ?

ジリーはファントムの天才的な芸術センスを知っていたからこそ、オペラ座やクリスティーヌのためにはファントムの力が必要だと考えて、あえて見守っていたのかな。ファントムの悪口を言う人を止めたり地下に踏み込もうとする人を制止したり、ファントムとオペラ座関係者を守りながら…

 

最後に舞台はまた1919年に戻り、ラウルが亡きクリスティーヌの墓前にオークションで競り落とした猿のおもちゃを供えるシーンで終わる。

事件から50年近く経っているけど、ラウルも、そして亡くなる前のクリスティーヌもファントムのことを忘れていなかったんだな…

そしてラウルが来る前から墓前に置いてある一輪のバラ。

黒いリボンと、クリスティーヌが去るときに返した指輪(かな?)が着けられていて、ファントムを連想せずにはいられません。

ファントムはこのとき生きているとしたら90歳くらい?本人なのか、それとも別の誰かなのか…

余韻を残した終わり方もまたいい。

 

市村正親さんがファントムを演じたミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』を観ているので、クリスティーヌとラウルのラブシーンを見ても今後の関係を思って少し複雑な気持ちになってしまった。

でも、映画版のクリスティーヌは事件後にラウルと幸せな家庭を築いて、幸せに人生を終えたんだね。よかった…!

 

この作品を映画館で観られたことに心から感謝です。

音も映像も最高でした!

 

映画館のホットドッグ、食べづらいけどおいしかった

 

 

「書く」ことへのモチベが下がったら読み返したい『書く習慣』

いしかわゆきさんの著書『書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜』を読んだので感想。

私は、最初の自己紹介ブログでも書いたとおり書くことは嫌いではなかったし、文章を褒めてもらったことも何度かある。

「私は文章が得意なんだ」と思ってしまいブログを始めてはみたものの、どうも自分の文章の面白くなさが気になる。

すごく感情を動かされた舞台や映画を観ても感想は「よかった」「素敵だった」など薄いものばかり。

これでは、読んだ人に共感してもらうどころか、自分の記憶が薄れてからブログを読み返してみても、きっと当時の感動を思い出せない。

それじゃ意味がない!ブログを始めたそもそもの目的は、感動を残しておきたかったからなのに…

 

だいぶ前にインスタで紹介されているのを見て気になり、読みたい本リストに入れていた本書。

最近になってまた別の方がブログで紹介しているのを目にして、思い切って読んでみました。

以下は、読みながら書いた読書メモ(引用部分が多くなりすぎてしまったので少し要約や言い換えをしています)。

本の中には読書感想文の書き方の項目もあるのに、そのとおりに書いていなくて少し後ろめたい…

 

読書メモ

第1章 言葉と仲良くなれば書けるようになる

まずはその「メイク」を脱ぎ捨てよう

上司への愚痴も、人に見せるとなるとマイルドな表現になる。人に伝わる面白い文章とは、その人の心からの本音が書いてあるもの。

→感情を繕わずにそのまま吐き出したほうが、おもしろい文章になるし共感も得られる!

人に見せることを意識すると着飾った文章になる。誰にも見せない前提で書く練習をしてみよう。

→私はブログで書く文章を面白くしたくてこの本を手に取ったので「見せる」文章を書きたい。でも見せない「つもり」で書くことはできる。とりあえず見せないつもりで書いてみて、公開前に確認する癖をつけよう。

小論文・レポートの「お作法」、いりますか?

あえて句読点を入れず、言葉を重ねて捲し立てるという手法もある。

→昂った感情がより伝わりやすい。好きなものへの愛をこうやって叫んでいるブログ、好きだな〜

「うわぁ~」と思ったら「うわぁ~」と書いてしまえ

「うわぁ~」に人柄や本音が滲み出ているのだから「驚いた」「恐れ慄いた」などと言い直したらもったいない。

→素直な感情は語彙以上にものを言う、ということかな。

 

第2章 習慣になれば書くのが楽しくなる

「自分日記」で思いを言葉に変えていこう

突然指名されてもサラッと自分の考えを答えられる人は、自分の考えを言語化するのに慣れている人。

→こういう場面でもごもごしてしまう。言語化の練習必要だな… 仕事中に「自分日記」は書きにくいけど、他にできることはないか考えよう。

「思考停止時間」を探し出せ!

・湯船に浸かっている時間

→ノってるときはお風呂とかトイレとかのスキマ時間でブログ書いてたけど、最近やってない。またやってみよう!

「毎日やる宣言」で自分のプライドを利用する

習慣化ができない原因の1つに「やめても誰にも怒られない」という「甘え」の感情がある。「誰かに宣言する」ことも習慣化の手段。

→自分にはこれがいちばん効く気がする。毎日ブログを書くのは無理だから、毎日Twitterで日記書いてみる!?

「本・漫画・映画」はツイートするまでが体験

意外と人は他人の意見を知りたがる

→確かに知りたい!感想ブログ書くほどではない映画の感想をNotionに溜めてるけど、Twitterですぐに出すようにしようかな。感想ブログ書くものも、観た直後に取り急ぎ140字で投稿してもいいかもしれない。

 

第3章 ネタを見つけられると止まらなくなる

「愛」のある発信は無益でも受け取ってもらえる

どんな文章テクニックをも凌駕する最強のコンテンツ。それは、「好きなものについて書く」こと。

→本当にそう思う。全く知らない人の、全く知らないアイドルへの熱量高い文章とか、つい読んでしまう。

「枯れた心」からネタは生まれない

たとえば映画を観ても、「楽しかった」「良かった」だけではなく色々な感想が浮かんでくるはず。

→そのはずなんだよな〜… 言語化難しい!

コンテンツに触れてしばらくすると思い出せなくなり、「楽しかった」だけの薄い感想になってしまう。

→本当にもったいない!私は読んだそばからペラッペラな感想になってしまうけど。だからこそ言語化の練習大事!

「面白かった」でおわらない人になるための読書術

アウトプットとインプットのバランスは7:3が最適。つまりアウトプットが読書のメイン。 

→私は3:7くらい、いや1:9くらいになってしまっているな… アウトプット心がけたい。

 

第4章 ちゃんと伝わると嬉しくなる

その文章、「中学生」にも伝わるレベルですか?

専門用語を日常的に使っている人はそれに慣れてしまい、その自覚もなくなっている。聞いている側もわざわざ話の腰を折って用語の意味を質問せず、知ったかぶってしまう。

→どちらの立場も心当たりがある… 昔何かで見た「自分の説明が相手に伝わらないのは自分の説明力のせい、相手の説明が自分に伝わらないのは自分の理解力のせい」という捉え方を意識していきたい。

すべての文章は「知るかボケ」前提で書く

自分が知っていることを世の中の当たり前だと思わない 

・専門用語は使わない
・固有名詞には必ず説明を入れる

→これは、内容を広く伝えたい説明の際には重要だと思う。旅行ブログとか。一方、熱量を伝えたい推し活ブログではあえて専門用語を多用するのもテクニックかもしれない。同じ趣味の人だけに向けた、その分野に明るくない人が読んだら全く何を言ってるのかわからない文章。逆に惹かれる。私は自分が明るくない分野のこういう記事を読むのが結構好き。

「たったひとり」の向こうに世界は広がっている

たくさんの人に読まれたいと思えば思うほど、「誰にも刺さらないふんわりとした文章」になる。

→まさに私の文章がそう。当たり障りなく、満遍ない文章…

身近なひとりを思い浮かべて書いた文章は、その他大勢にも届く。

→これは知らなかった。実践してみたい。

「誰でも書けそうな文章」から抜け出す方法

著者がベストセラーをSNSでおすすめしたところ、多くの人が購入した。これまで本の存在を知っていても購入していなかった人が購入したのは、SNSの文章を通じて著者の本への情熱が伝わったから。 

→すごくわかる。偶然出会ったばかりのブログでも、文章で熱意が伝われば「信頼」に繋がり行動することもあるし。この『書く習慣』を買ったのもまさにそう。

「この人の解釈、好きだなぁ」とか、「この人の考えかたはいいなぁ」と思ってもらえたら、文章を通じてファンがつくようになる。

→これが私の理想!少数でもいいから、共感してファンになってくれる人がいたら嬉しいなあ。

 

第5章 読まれるともっと好きになる

文章の顔はイケメンよりも「三枚目」くらいがいい

文章のタイトルは、「パワーワード」と「主観」を混じえて具体的な内容をチラ見せ。中身を読みたくなる。

→なかなか難しい… 練習あるのみ。このブログのタイトルは「主観」を交えてみたつもりだけどどうかな。

誰かの「日課」にしてもらう

毎回同じ時間帯や曜日に投稿すれば、読む人の習慣にしてもらえる可能性がある。 

→できたらいいなあ。でも義務化して嫌になってしまうことだけは避けたい。無理のない範囲で…

過去の自分に向けて書くと、「未来の誰か」が救われる

「過去の何も知らない自分」に向けた文章は、具体的なエピソードや後悔、失敗を未然に防ぐためのノウハウが詰まった、価値のあるもの。

→旅行先での失敗など、誰かの役に立つかもしれない。「誰も興味ないよな…」とカットしないで、ありのまま書いてみよう。

惹きつけたいなら、「調和」を乱そう

著者は、新海誠監督の『天気の子』について、「主人公めちゃくちゃ自己中だな!」との感想を書いた。

→作品自体はとてもよかったけどある一点が微妙だったときって、作品を否定したくないから微妙な点をあえて書かなかったりすることがある。他人の目を気にしてというよりは自分の気持ち的に。それもありのまま出したほうがおもしろいかもな〜

本筋とは関係ないけど『天気の子』への感想がその通りすぎて笑った。

反応がなくても、みんな「ひっそり読んでいる」よ

書き手が「読まれた」ことを知る方法は意外と少ない。実際は反応せずに読んでいる人が大多数を占めている。

→そうかあ。反応がすべてとは思わないけど、反応少なくなるとモチベーション下がるのよな。でも読んでくれていると信じて頑張ろう。というか私も好きなブロガーさんのブログ特に反応しないで読んでるわ…

 

第6章 「書く」ことが与えてくれるもの

「口下手な自分」をちゃんとわかってもらえる

口下手でもコミュ障でも、ちゃんとわかってもらえる場所を作るために、書くことが一役買ってくれる

→この項目の前半に書いてあることは、正論だとは思いつつあまり自分には刺さらなかったけど(組織に属して仕事している自分の現状では、苦手でも対面のコミュニケーションは避けられないから)、この一節は刺さった。仕事では難しくても、趣味のSNSやブログで素直な気持ちを書いて「わかってもらえる場所」にすることはできるかもしれない。

 

感想

確実に「書く」ことへのハードルを下げてくれる本。

私はこういう実用書?ビジネス書?が得意ではなくほぼ読み切ったことがなかったのだけれど、本書はもともと著者がnoteに投稿した1,000字程度の記事をまとめて本にしたものだそうで、2日間であっさり読み切ることができました。

書くことを義務のように感じて、モチベーションが下がってしまったときに読み返したい。

自分のスタイルに合っているのかどうかわからないけれど(短くても毎日書く習慣をつけたいのか?感情が動いたときだけバーッと長文を書きたいのか?)せっかくなので「#1ヶ月書くチャレンジ」をしてみようと思う。

1ヶ月やってみて「何か違う」と思っても、それはそれでアリだよね。